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データ基盤にCognite Data Fusionを活用し、インテリジェント製鉄所の構築を目指すJFEスチールの革新的な取り組み

データ基盤にCognite Data Fusionを活用し、インテリジェント製鉄所の構築を目指すJFEスチールの革新的な取り組み

  • 生産最適化

JFEスチールは、2003年に日本鋼管(NKK)と川崎製鉄の鉄鋼部門が統合して発足し、2023年度時点で国内第2位、世界第13位の粗鋼生産量を誇る。同社は、東日本製鉄所と西日本製鉄所の2つの一貫製鉄所に加え、2つの製造所を保有し、薄板や厚板、形鋼、棒鋼、鋼矢板、レール、電磁鋼板、線材、鋼管などさまざまな鉄鋼製品を生産している。

鉄鋼製品は、石炭と鉄鉱石を原料とし、多数の製造プロセスを経て製品となる。鉄鉱石を還元して鉄を製造する高炉は、高さ100メートル、容量5,000m³、内部温度は2,000℃を超えるダイナミックな設備である一方で、鉄を薄く伸ばす熱間圧延機では、時速100kmで流れる全長2kmの鋼板の厚さをミクロンオーダーで制御するなど高精度なものづくりが求められる現場でもある。

JFEスチールは長い生産活動の歴史を持ち、蓄積された高級鋼製造ノウハウ、老朽設備対策、予知・予兆管理に関するデータの高度活用が競争力の源泉となっており、さらに積極的なデータ活用・デジタルトランスフォーメーションを推進するべく、DX戦略本部を2024年度に設立した。

右: DX戦略本部 DX企画部長 廣山 和敏氏 / 中央: DX戦略本部 DX企画部 兼 デジタル化推進部 主任部員 佐藤 健氏 / 左: DX戦略本部 DX企画部 兼 デジタル化推進部 主任部員 庄村 啓氏
右: DX戦略本部 DX企画部長 廣山 和敏氏 / 中央: DX戦略本部 DX企画部 兼 デジタル化推進部 主任部員 佐藤 健氏 / 左: DX戦略本部 DX企画部 兼 デジタル化推進部 主任部員 庄村 啓氏

CDF導入前の課題

同社では、製鉄所全体の操業最適化と品質管理の効率化を目指し、インテリジェント製鉄所の実現に向けた取り組みを進めている。インテリジェント製鉄所においては、単にデジタルツインのようにデジタル上に仮想モデルを構築するだけでなく、現実の製造プロセスにおけるセンサーデータや操業データを収集し、それらを製造プロセスの仮想モデルを使ってリアルタイム状態の把握、将来状態の予測を行い、その結果を現実の製造プロセスにリアルタイムにフィードバックする。JFEスチールは、これらを実現するために、サイバーフィジカルシステム(CPS)の構築を段階的に進めてきた。
例えば、高炉は非常に高温であり、炉内を直接見ることができない。そのため、従来は熟練オペレーターの経験に基づいて操業していた。しかし、CPS化が進むことによってサイバー空間に高炉のモデルを再現し、内部状態をリアルタイムで可視化した結果をもとに操業に関するガイダンスをすることで、操業の安定化と効率化が可能になった。

インテリジェント製鉄所として操業の自律化と最適化を実現するには、製造工程におけるあらゆるプロセスのデータを取得・統合し、製鉄所全体をCPS上に再現することが求められる。そのためには、センサーデータ、操業データ、製品データをすべて連携させ、統合することが不可欠であるが、CPS上でのデータ統合には3つの課題があった。

1つ目の課題は、取り扱うデータの規模が膨大であることだった。製造6拠点の主要製造ラインだけでも100ラインを超え、操業条件・品質データ・生産実績・製造諸元などを含めると、1ラインあたり数千~数万項目に及ぶ。全体のデータ量は数百万項目にもなり、大量の時系列データや製品データを一元的に管理できるプラットフォームが必要だった。

2つ目の課題は、製鉄所特有の複雑な製造プロセスデータを紐づける仕組みだった。鉄鋼の製造は、鉄を溶かして固める工程から始まり、熱間圧延で延ばし、メッキ処理を施し、さらに熱延・冷延・分割といった複数の工程を経て完成する。この過程で鋼板は長手方向に延ばされ、不良部分のカットやコイル状への巻き取りによって製品位置や向きが変化する(図1)。最終工程で不良が発見された場合、その品質要因を解析するには、複数の製造ラインの品質データや操業条件データを統合する必要がある。しかし、製品1品毎に通過工程や切り捨て・分割などの処理などが異なることから、各製造ラインやITシステムからのデータ収集・前処理・紐づけには膨大な手間と時間がかかっており、これらのプロセスを容易かつ標準的に行える仕組みが求められていた。

図1. 製造工程の段階でTopとBottomが入れ替わる
図1. 製造工程の段階でTopとBottomが入れ替わる

3つ目の課題は、データ処理のリアルタイム性だった。JFEスチールのCPSは、異常の検知・予知にとどまらず、実プロセスへのフィードバック(オペレーターへのガイダンスや自動化)を実現する仕組みとなっている。そのため、異常を検知してからアクションを実行するまでの時間が長くなっては意味がない。膨大なセンサーデータをモデルで解析し、即座に応答できるリアルタイム性が求められていた。

JFEスチールは、複雑かつ膨大なデータを容易に紐づけ、リアルタイムで分析とフィードバックまでができるデータ統合プラットフォームを求めていた。

検討開始から意思決定までの背景

様々なプラットフォームを検討する中で、JFEスチールはCogniteのデータをコンテキスト化する技術に着目した。そして、オスロ本社を訪問し、CDFの機能や活用事例の紹介を受けた。

オスロ本社では、CTOをはじめとするエンジニアチームと直接対話し、Cogniteのデータ紐付けモデルの一つであるデータモデルを活用した、多工程長手方向データの統合の実現性について具体的な議論を交わした。

図2. オスロ本社訪問時の様子
図2. オスロ本社訪問時の様子

導入検討時には、パブリッククラウドのネイティブサービスを組み合わせ、大量の時系列データや既存社内システムからのデータを収集するカスタムシステムを構築する案も検討していた。しかし、柔軟なデータモデルの設計ができ多工程にわたる製造データの紐付が標準的に可能である点、大量の時系列データをリアルタイムに処理できる点、多様なシステムとの連携が可能なエクストラクタ、API、SDKが常に最新の状態で提供される点を評価し、CDFの採用を決定した。

PoCの実施と全社展開

2023年度に、5つのラインでPoCを実施した。自動車向け薄板を製造する4つのラインを対象に多工程長手方向データの紐づけの検証を行い、1つのプロセスラインを対象にデータ処理のリアルタイム性を検証した。

多工程長手方向データの紐づけの検証では、複数の工程で収集された数千項目規模のセンサーデータと製品品質および製品諸元のITデータを紐づけ、さらに製品品質を解析するAIモデルとの連携も含めて実施した。その結果、CDFのデータモデルを用いてデータの紐付けを標準化し、AIを活用して結果を出力できることが確認できた。
リアルタイム性の検証では、1つのプロセスラインでのセンサーデータの伝送からCPSのモデル実行、結果の出力までの処理が1分以内で実行可能であることが明らかになった。

PoCを通じて、各プロセスの操業データ、品質データ、不良・欠陥データ、および長手方向の位置データを統合し、標準化した形で運用できることが実証された。これによりAIを活用した品質不良の要因の推定が可能となり、操業改善の迅速化が可能となる。また、プロセスラインに対するCPSによるリアルタイムの操業ガイダンスが可能であることが確認された。こうした成果から、CDFがJFEスチールの求めるデータ統合プラットフォームの要件を満たしていることが明らかとなった。

PoC終了後、JFEスチールは2024年3月にデータ統合基盤としてCDFの全社展開を決定し、生産実績や製品品質データなどのITデータと、センサーから得られる操業データといったOTデータの統合をJFEシステムズの支援のもと推進した。2024年9月にはCPSの開発・実行をクラウド上で一元的に行うプラットフォーム「J-DNexus™」をリリースし、本格運用を開始した。「J-DNexus™」は新たなCPSシステムの構築期間を従来比で30% 短縮することができる。

今後の展望

JFEスチールは、高炉をはじめとする一連の製造プロセスに対し、さまざまなCPSの導入を進めている。CDFをデータ基盤とする「J-DNexus™」を活用して個々の製造プロセスに対するCPSの進化のみならず製造プロセス全体の一貫したCPSの構築を目指している。 その取り組みの中で、2025年度末までにCDFへの主要100ラインのデータ統合を完了させる計画だ。

また、CDFのデータ統合により、リアルタイムで誰でも場所を問わずプラントのデータをChartsやCanvasなどを使って閲覧・分析できる環境が整う。これにより、操業のトレンド管理やプラントの異常検知が可能となる。JFEスチールはCPSの構築基盤だけにはとどまらず、JFEシステムズと共にCDFをより広範囲の社内データ活用基盤として利用を拡大していく予定である。

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