産業向けDataOps徹底ガイド
DataOpsは、現在の業界ではまだ目新しい概念ですが、やがては産業データを具体的な価値に変える最も重要な手段のひとつとなることが予想されます。
Chapters
産業向けDataOpsを始める絶好の機会が到来
産業向けDataOpsを利用する準備は万全ですか
データの価値を引き出す
- デジタル成熟度から産業変革へ
- 分野としてのDataOps
- DataOpsの直接的な利点と間接的な利点
- 効率的なデータ管理
- データアクセシビリティの向上
- ユースケースの迅速な開発とアプリケーションの使用可能性
- 副産物としてのエンタープライズデータガバナンス
- 産業向けDataOpsが重厚長大企業に潜在的な価値をもたらす
- 産業用データを利用可能にする
- データを信頼する
- IT/OT/ET/Xデータのコンバージェンス
- テクノロジーの境界を越えた進歩により、IT/OT/ET/Xデータのコンバージェンスがかつてないほど可能に
- データの活用
- コンテキスト化
- 産業向けハイブリッドMLOpsの有効化
- さらに複雑さを増す状況
- データの価値を高める
- DataOpsの民主化
- 概念実証の先へ
- 産業向けDataOpsを採用するときの考慮事項
- 理論から実践へ
産業向けDataOpsの原則
産業向けDataOpsの活用事例
生き残り、成功するために今すぐ行動を
(再)発明の母
2020年、かつては無敵と思われた特定の産業分野が、存続の危機への対応を余儀なくされました。経済は壊滅し、原油価格は歴史上初めてゼロを割り、航空会社の株は大暴落し、相当な数の人が職を失いました。
最悪のシナリオはもはや単なる仮説ではなく、変革、脆弱性への対処、回復力の強化、デジタル化の促進に向けた大規模な取り組みがなければ、十分に起こり得ることでした。実際のところ、生命、仕事、市場を救うテクノロジーがまだ登場していない10年前や20年前に今回のようなパンデミックが起きていたとしたら、事態ははるかに悪化していたことでしょう。
石油・ガス、製造、電力・ユーティリティといった、かつてアナログだった伝統産業において、デジタルツールを採用し始める動きが一気に加速しました。
COVID-19によってほとんどの作業者が在宅を余儀なくされたため、我々は一斉にリモートワークをテストし、おおむね成功しました。さらに、リモートオペレーションを試験的に実施するとともに、産業データから真の価値を生み出すテクノロジーの強化について知識を深めました。必要が「大規模な再発明の母」となったのです。
こうした産業はその一方で、環境に与える影響と歯止めのない排出の責任を認めるべきだという世論や財政的な圧迫に対して、取り組みを始めました。
それにもかかわらず、前例のない気候関連の災害が我々の面前で繰り広げられました。それはパンデミックで受けた損失にさらに追い打ちをかける痛手であり、我々は恐ろしい現実から目を背けることができませんでした。オーストラリア、そして米国のカリフォルニア州とコロラド州での森林火災、送電網の障害、米国メキシコ湾岸を襲った記録的な数のハリケーン、東南アジアでの記録的な洪水、シベリアでの永久凍土の融解など、世界各地で多くの災害がありました。
目を大きく見開く
こうした現実がいかに不快なものであっても、目を大きく見開くことでチャンスが訪れます。2020年に産業企業全体が遂げた進歩は、その大部分が必要性と真の切迫感から生じたものとはいえ、すばらしいことでした。全般的に見て、デジタルトランスフォーメーションはもはや乱用されるPR用語でも、リスクの高いCAPEXの手段でもありません。
産業向けソフトウェア、デジタルツール、ロボット工学、新しいアジャイルな働き方の採用が広まっています。これらは、これまで重厚長大産業が後れを取っていた領域です。
産業データの価値は、新世代のソフトウェアソリューションによって民主化され、コンテキスト化されることで、今や広く認められています。そして最後に、このようなデータを共有、公開、要約しようという意欲が我々の産業全体に広まりつつあります。今こそ、産業データを活用するときです。
こうした必要かつ持続可能な再発明の基盤が、今ここにあります。この基盤は、公的および経済的なインセンティブ、競争的な動機付け、生存本能、イノベーション、嘘偽りのない善意で成り立っています。今すぐ、そして大規模に、実際のトランスフォーメーションの業務を行うノウハウ、テクノロジー、ツールが必要です。
産業向けDataOps:新しいツールの登場
絶対に必要なツールを1つ挙げるなら、急成長を遂げつつあるDataOpsの新しい分野、すなわち産業向けDataOpsの今までにないアプローチです。
現代の産業においてはまだ構想段階に過ぎませんが、このアプローチは産業データを具体的な価値へと変える、最も重要な唯一の手段になると期待されています。そうすることで、産業向けDataOpsが産業変革の原動力となります。
産業向けDataOpsは実に革新的かつ変革的な新しいアプローチであるため、6章構成の本書の残りの部分を使って、産業向けDataOpsとは何か、貴社および貴社の産業にとって重要である理由、今必要な理由、そして導入を開始する方法について余すところなく説明します。産業向けDataOpsの基本は、ここから始まります。
2010年代のDevOps、1990年代のビジネスインテリジェンス、1890年代の人事がそうであったように、2020年代において産業向けDataOpsは耳新しく、まだ広く知られた存在ではありません。
産業向けDataOpsとは
産業向けDataOpsの核となる原則については、以降の章で詳しく説明します。したがってここでは、基本的な概要だけを簡潔にご説明します。それではまず、DataOpsとは何かを定義しましょう。DataOpsは、一般に「データ重視の企業をサポートするツール、プロセス、組織構造を提供する」ために存在する、データの専門家(データサイエンティスト、アナリスト、アーキテクトなど)のチームを含む新しい分野であると定義できます。
Gartnerによると、「DataOpsとは、組織全体でのデータ管理者とデータ利用者間のコミュニケーションの向上、およびデータフローの統合と自動化の改善に焦点を当てた、共同作業によるデータ管理の手法」と定義されています。
Forresterによると、「DataOpsとは、ソリューションの実現、データ製品の開発、データのアクティブ化によって、インフラストラクチャからエクスペリエンスに至るすべてのテクノロジー階層でビジネスの価値を実現する機能」と定義されています。
この説得力のある2つの定義に共通するのは、共同作業の重要性と、組織のさまざまな部分にわたるデータ統合の重視です。
産業向けDataOpsは、部門間の壁を取り払い、産業データの幅広い可用性と有用性を最大限に活用します。これは、石油・ガスの上流部門、再生可能エネルギー、ユーティリティ、自動車、製造といった重厚長大産業で生成されるデータを意味します。
産業向けDataOpsに関する3つの重要な真実
- 共同作業
- 貴重なデータ
- アジリティ
産業向けDataOpsには、特定分野の専門家(SME)との共同作業が必要です。
データを組織全体のデータ利用者(さまざまな現場および部署の特定分野の専門家)にとって有益かつ有用なものにするには、個人および連携(プロセスおよびツールの範囲にとどまらない連携)が不可欠です。忘れてはならないのは、DataOpsは一種の手法、つまり、データから生じるさらに大きな価値を共有するだけでなく獲得するために、組織全体で取り組み、共同で作業する手段であることです。
産業向けDataOpsではないもの
産業向けDataOpsはDevOpsではありません。DevOpsはしばらく前から存在しており、表面的な共通部分はいくつかありますが、大きく異なります。どちらも運用上の手法を強化する方法論ですが、似ている点はそれだけです。
DataOpsが主眼を置いているのは、ビジネス対応の、信頼性に優れた、実行可能な高品質のデータを組織全体のすべてのデータ利用者または特定分野の専門家に提供することです。1つの目標はデータガバナンスと統合を中核とする、自動化への取り組みです。
もう1つの目標は、ITシステムのサポート、運用、ビジネスの間での調整です。一方、DevOpsで重視しているのはソフトウェアとアプリケーションの開発です。自動化への取り組みは、開発サイクル、ソフトウェア配信プロセス、無駄の排除に重点を置いています。開発者、オペレーション、ビジネスの調整が、DevOpsの主要な目的です。
今なぜ、産業向けDataOpsを選ぶべきなのか
産業向けDataOpsは、データリテラシー(データの読み書きおよび通信の能力)推進の必須要素です。さらに、データリテラシーはデータおよびデジタルから最適な価値を引き出す鍵となります。したがって、産業向けDataOpsを採用する組織が増えるほど、データ変革の可能性を本当の意味で活用する準備が整います。その結果、我々は持続可能で効率的、安全な産業オペレーションという共通の最終目標に一歩近づきます。
ここまでで述べてきたことは、重厚長大産業がソリューションおよびデータ製品を開発し、企業全体で価値を引き出すために、データをどのように活用できるのかを探る出発点です。ついこの間まで、データは保護された商品であり、個人だけで利用され、さらには交渉の取引材料として使用されていましたが、今やそのことを想像するのはほとんど不可能です。ありがたいことに、これは一時的な狭量さであり、データの驚くべき可能性を認める先見性を持った人々は、このような考え方を意に介しませんでした。彼らの未来像が残りの者へと広がり、広大なデータの海での救命ボートとして産業向けDataOpsが出現する起爆剤となりました。
では、なぜ今DataOpsが必要なのでしょうか。高度なデータオペレーションと新しい働き方の導入を遅らせれば、結局は会社の、ひいては産業の変革が遅れるだけだからです。その結果、最終目標の達成は遅くなり、困難になり、さらに費用がかかることになります。
重厚長大産業では、データの力に加え、意思決定に情報を提供し、オペレーションを変革し、サステナビリティを強化するデータの能力に目覚める企業が急速に増えています。
このような動きの中で、産業向けDataOpsを組織に展開するための必須のガイドとして、本書をご利用いただければ幸いです。
デジタル成熟度はデジタルの成功を示す重要指標
産業向けDataOpsを採用し、その利点を享受しようという組織は、自社のデジタル成熟度の状態を考慮する必要があります。デジタル投資から並外れたROIを獲得するには、わずか1つまたは2つの四半期に集中した取り組みではなく、持続的なイノベーションと長期的なデジタル戦略が必要であることは明らかです。これは、多くのユースケースを導入することが重要ではないということでも、短期的な価値が見込み薄ということでもありません。デジタルプログラムを開始して運用を勢いづけることは難しく、さまざまな理由ですぐに失敗する可能性があるという意味です。
現在非常に多くの組織が失望しているのは、まさにこうした理由からです。このような組織は短期的に莫大な利益を期待しており、長期的な取引を十分に理解していません。公平に言えば、広範なデジタルトランスフォーメーション市場は価値の即時性を過大に約束していましたが、高度なデジタルテクノロジーの大きな潜在的可能性に関してソリューション市場の正確性は失われていません。これは「もし」ではなく「いつ」の典型的な例です。
McKinseyによる証拠(図1)が説得力を持って示すように、この断絶はデジタルトランスフォーメーションの停滞という形で表面化しています。
産業全体で、進展が停滞するのはスケーリング段階が最も多く、根本原因の62%は組織の短中期的な管理の範囲内にある要因です。たとえば、運用の概念実証(PoC)の開発は、ここ2、3年ではるかにシンプルになっていますが、その反面、スケーリングには依然として課題が残っています。
しかし、これは非常に重要な類似点を示しています。PoCが短期的なプロジェクトであるのに対して、スケーリングは長期的です。現在のこうしたパラダイムに欠けているのは、さまざまな局面でデジタルの勢いを前進させ、構築するためのしかるべき人、プロセス、プラットフォームのフライホイールです。
デジタル投資から並外れたROIを獲得するには、わずか1つまたは2つの四半期に集中した取り組みではなく、持続的なイノベーションと長期的なデジタル戦略が必要です。
今日の意思決定で使用される尺度およびKPIは、短期的な価値を示すことに固執するあまり、スケーリングとその先をサポートするデジタルトランスフォーメーションの次の段階を奨励することを怠っているのです。
ここでは、運用上の採用、分析コスト、およびオペレーションの手数料としてのデジタル支出に関する新しい長期的な指標が、問題のはるかに重要な部分になります。これらの指標は、おそらくもっと重要な、新しい尺度であるデジタル成熟度に一体化できます。
デジタル成熟度は、手法として体系化され、指標として定量化されることで、全体の進捗を測定する持続可能な方法、および産業のデジタルトランスフォーメーション全体の健全性に対する優れた尺度を表します。

デジタル成熟度の定義
最初に起こるべき変化に伴って必要なのは、デジタル成熟度の曲線が指数関数的であり、線形ではないと理解することです。大まかに言うと、初期の成熟度はリンクされたデータまたはリンクされていないデータの多くの「ピース」つまり構成要素から成り、高コストの内部またはサードパーティのサービスと組み合わせることで、機会のサイロが生じ、小規模なプロジェクトとPoCが促進されます。組織が成熟するにつれて、内部またはベンダー提供のアプリケーションの枠組みによって、ある程度の再現性が生み出され始めます。特に、データ分析プラットフォームと組み合わせたときにその傾向が見られます。
このプラットフォームは高い成熟度への橋渡しをします。というのも、勢いとインフラストラクチャを前進させることによって、少ないサービスと低い限界費用で導入可能なデータ分析のカタログとライブラリが作成されるからです。この移り変わりの時期に、並外れたROIが展開し始めます。
図2:デジタル成熟度とROIの関係
高いデジタル成熟度とはどのようなものか
デジタル成熟度をサポートした組織の構築は、企業レベルまたは個々の事業部門内で異なって見える可能性があります。しかしその一方で、成熟度の高い組織には、内部要因と外部要因の比較によって区分される共通の属性がいくつかあります(図3)。

内部の推進要因
- 目的と戦略
- デジタル化の野心が明確で、定義されており、戦略的である。
- 勢いと速度に合わせて、デジタル化の目標に期限が設定されている。
- 人と思考様式
- IT/OTがデジタル化の成功に等しく責任を負っている。
- デジタル戦略とKPIが頻繁に伝達されている。
外部の推進要因
- 価値獲得プロセス
- 情報アーキテクチャ
- データ遍在性
個々の組織が戦略としてデジタル成熟度の達成を目指し、そこに投資することで、組織のパフォーマンスが向上します。
Deloitteの最近の調査により、デジタル成熟度の高い組織は、業界平均を上回る優れた効率性、収益成長率、純利益に加え、高品質の製品とサービス、優れた顧客満足度、強化された従業員エンゲージメントと明確な関係があることがわかりました。4
したがって、デジタル成熟度は組織の成功を可能にしますが、ある部門のデジタル能力が会社の他の部門よりも著しく進化している場合には、この可能性は現実のものとならないことがあります。
この状態を、デジタル成熟度に投資するという全社的な指令と比較すると、結果的な勢いは、すべてのデジタルプロジェクト(成否は問わない)の微妙な差異およびノイズへの対応から、根本原因の解決に移行します。
避けるべきデジタルの落とし穴
デジタル成熟度を追求するときに組織が陥る可能性のある落とし穴の例をいくつかご紹介します。
デジタルの落とし穴1:スカンクワークスプロジェクト
成熟度の低い組織であっても、ビジネスの問題または機会は最終的に対処されます。一般に、かなりイライラしたり、潜在的な知覚価値を無視するのが不可能になったりすると、この落とし穴がその場限りの形で発生します。ここで、この機に便乗した従業員がイニシアチブを取り、持ち合わせたスキルとツールで問題を解決しようとします。
たとえば、あるオペレーターが履歴イベントを特定のアセットの時系列データと簡単に比較できないためイライラしているとします。アセットの履歴およびタイムスタンプの付いたイベントの記録にアクセスできていれば、スプレッドシートを利用したレポートを作成してデータをリンクし、シンプルな表に表示することができたでしょう。
こうしたスカンクワークス(非公式のイノベーション)プロジェクトを利用して解決されている問題の多くは、極めて貴重です。しかし、アプリケーションを本番適用するための意図的で摩擦の少ない経路を組織のデジタル成熟度がサポートしていない限り、レポートが独立したサイロ内にとどまるため、わずかな価値しか実現されない可能性があります。これは、デジタルのプロセスとプラットフォームを改善する機会を示しています。
デジタルの落とし穴2:無意味なプロジェクト
もう1つの側面として、一見、斬新かつ革新的であるものの決して実体のある追跡可能なビジネス価値へと具体化することのないプロジェクトに、関わり合いになる可能性があります。提供される価値をプロジェクトのコストが著しく上回るか、プロジェクトで導入した新しいテクノロジーによってワークフローに下流の問題が追加で生じることで、重要な利点が無になります。
拡張現実や産業用ロボット工学といった新しいテクノロジーが運用環境にますます導入されるにつれて、両者のバランス確保の課題がよく目につくようになります。一方で、実世界のユースケースは実体があるとともに有益で、人間のオペレーターにリモートアクセス、可視性、安全をもたらします。もう一方で、このユースケースは、企業がデジタル化を積極的に追求していることを示す、顧客、市場、投資家、競合他社にとっての明確なシンボルとなります。
「こうした無意味なプロジェクトを長期的な価値へと変えるには何が必要か」という問いの答えになるのが、成熟度の高い組織なのです。この場合、リーダーシップとプロセスの周辺に機会が存在します。リーダーは、情報伝達のためのニーズと、特定の運用目標とKPIに対する投資および進捗を推進する、厳密で体系的な価値の評価および獲得のプロセスとのバランスを取ることができなければなりません。
デジタルの落とし穴3:厄介なプロジェクト
3つ目の状況では、非常に洗練された、実際のビジネスの問題を解決するプロジェクトを伴いますが、ライフサイクル全体で大量のリソースとメンテナンスを維持する必要があります。特定の人工知能(AI)と機械学習(ML)のプロジェクトがこのカテゴリーに分類されます。というのも、MLベースの予測分析を完全に本番適用するのにかかる労力を多くのデジタルチームが軽視しているからです。
重要な産業アセットに対する予測メンテナンスは、間違いなく解決する価値のあるインパクトの大きいビジネスの問題です。熟練したデータサイエンティストにとって、初期モデルを作成して予測結果を示すプロセスはさらに単純明快になりつつあります。しかし、モデルが本番環境に近付くにつれて、別の問題が生じます。導入後も、モデルのメンテナンス、トレーニング、統合が継続的に必要です。
チームが長期的なオーバーヘッドを考慮していない限り、プロジェクトのコストを低下させる必要があります。ここで、成熟度の高い組織は、プラットフォーム、人、プロセスへの投資を通じ、データモデリングレベルで規模の経済を組み込むことができます。複数の導入済みプロジェクトから残りのオーバーヘッドを繰り越す負担が大幅に軽減され、価値の高い次のプロジェクトに向けてリソースを移動できます。
デジタル成熟度が不十分な場合のリスク
2020年には、石油・ガスベンダー100社以上が破産しました。この原因としては、原油価格、需要の落ち込み、埋蔵量の記録的な余剰など多くの要因があります。これは変動要素の多い、明らかに極端な例ですが、隠れた機会の特定、ビジネスモデルの変更、急速に変化しつつある経済シナリオへの適応にデータが十分に活用されないリスクを証明しています。
カリフォルニア州最大の電力・ガス会社であるPacific Gas and Electric (PG&E)社のケースは、組織がデータを十分に活用しなかった場合に何が起こり得るのかを示す良い教訓です。2018年、送電線故障により致命的な大規模火災が発生し、そのうち1つはこの会社の設備が原因であるとされました。
優れたデータとデジタルのシステムがあれば、リスクについてエンジニアに警戒させ、人命の損失と数10億ドルにも上る損害を防げたはずです。
PG&E社はイノベーションの採用と新しいテクノロジーの最前線にいることで有名でしたが、その動機付けとデジタルインフラストラクチャは、必ずしもこうした種類の運用変更を必要なペースで可能にするためのものではなかったのです。高いレベルのデジタル成熟度(および優れたシミュレーションと状態監視の後に続く価値)が、データの可用性が高い地域での山火事のリスク軽減に必要なデジタルシステムの実装に役立ったはずです。
非常に実践的なレベルで、これらはデジタル成熟度を高める戦略の採用を怠ったことに関連する主要なリスクです。
そのうえ、これらのリスクは相互に組み合わさり、理想的とは言い難い戦略および意思決定を引き起こし、デジタルプログラムから得られた勢いをさらに破壊します。
高いデジタル成熟度の見返り
では、デジタル成熟度を追求すると、どのような見返りがあるのでしょうか。前述のリスクの相殺に加え、デジタル的に成熟した組織には具体的な恩恵が多数あります。
デジタル成熟度の恩恵を受けている組織
デジタル成熟度向上への取り組みを採用し、恩恵を受けている産業組織の例は数多くあります。エネルギー分野のBP社は、リーダーシップから個々の事業単位に至るまでを対象とする強力なデジタルプログラムを使用して、電光石火の速さで動き続けています。
BP社は、情報を活用した戦略的な賭けを行い、早い段階で失敗を確認し、すばやく反復し、チーム全体で共有可能なソリューションを開発する能力を増強し続けています。
「さらに高度なテクノロジーを追加できるように基盤を構築する必要があります。解決したい問題を定義してから、そういったテクノロジーを実装する必要があります」
3M社、シニアエンジニアリングスペシャリスト、Robert Sentz氏
製造業では、3M社がデジタル成熟度への現実的な態度で先頭に立ち、この分野での課題をうまくまとめています。3M社のシニアエンジニアリングスペシャリストであるRobert Sentz氏が述べているように、「デジタルトランスフォーメーションにただ飛び込むのは非常に困難」です。変革には、強固な基盤の整備が必要なのです。
「取り組みを開始するための最初の一歩は、現在持っているものと将来どこに行きたいのかの評価、つまりロードマップです。次に、さらに高度なテクノロジーを追加できるように基盤を構築する必要があります。解決したい問題を定義してから、そういったテクノロジーを実装する必要があります」
3つ目は電力・ユーティリティの例です。この産業分野は慎重であることで知られており、そのビジネスの性質上、賭けの要素が強いことから、テクノロジーの導入が遅れています。しかし、ニューヨーク州電力公社(NYPA)はデジタルイノベーションのモデルとして広く知られています。NYPAは、戦略としてITとOT(運用技術)の両方でイノベーションを積極的に追求しており、小さな失敗でリスクを冒すことを恐れず、次世代の思考とテクノロジーの実装をサポートする文化を発展させています。全体的な目標は「カスタマーパートナーシップや革新的なエネルギーソリューションを通じて、さらには手頃な価格のクリーンで信頼性ある電気の供給に責任を持つことによって、経済活動の活発な、カーボンフリーのニューヨークへの転換を先導する」ことです。
測定の方法
この時点で、理論を実践に移すことを始める必要があります。前述したデジタル成熟度の5つの主要な要因を振り返ってみましょう(図3)。これらの要因は、重厚長大産業の多数の組織を評価し、その結果をサードパーティの調査と組み合わせた後に生成されたものであり、議論と評価の高度な枠組みを形成します。
ここで我々は、デジタル成熟度に影響する主要な要因を追加のパラメーターにさらに分割することができます。これらのパラメーターを一緒に測定および重み付けすることで、デジタル成熟度の概念を診断の枠組みに変換できます。
持続可能な枠組みの定義
- 目的と戦略
- 人と思考様式
- 価値獲得プロセス
- 情報アーキテクチャ
- データ遍在性
最善の結果を達成し、このデジタル成熟度への取り組みの結果として真に生きた測定値を得るために、1年に少なくとも2回はさまざまな関連分野の利害関係者と質問を確認することをお勧めします。このように、成熟度スペクトルの全域にわたって、時間とともに変化するイニシアチブと進捗を追跡できます(図4)。

産業におけるデジタル成熟度の実践
戦術と実行
ほとんどすべての主要産業にわたる自明の理が1つあるとするなら、産業の現実は表面上よりもはるかに複雑であるということです。このことが特に当てはまるのは、データの未来、そしてデジタル成熟度において急速に進化し続けるデータの役割です。
この章では、皆様の取り組みの全期間にわたって進捗を評価および測定するための新たな手段について解説しました。デジタル成熟度を真剣に検討することは、産業向けDataOpsを実装し、その利点を獲得する途上で絶対に必要な段階です。
以降の章では、DataOpsそのものの範囲に移り、最初に、分野としてのDataOpsについてご説明します。
デジタル成熟度から産業変革へ
すべての産業組織にとって、運用技術(OT)システムで生成されたデータのインテリジェントな使用は、オペレーショナルエクセレンスを高めるための中心的な取り組みです。したがって、デジタルトランスフォーメーション、データの使用、スケーリング、価値実現までの時間を誰もが話題にしている一方で、産業界で実際に利益を得ている企業はほとんどありません。
また、課題となるのはデータではありません。OTのデータは、組織がさらに効率的で回復力の高い運用を構築し、従業員の生産性と顧客満足度を高めるための素材です。このOTデータは豊富にありますが、産業組織はますますつながっていく運用から価値を生み出そうと奮闘しています。IDCが示すところによると、データを分析し、そのデータからかなりの程度まで価値を引き出している組織は4社中1社にとどまるとのことです。
適切なツールとプロセスがないというのは、相当に支障を来します。その結果として、データ作業者が自分の時間のほぼ90%をデータの検索、準備、管理に費やすことになります。データの価値を失うという不安から、組織は往々にしてデータの整理よりもデータの集中化を優先してきました。その結果、思慮を欠いた「データスワンプ」が生じ、不明瞭でコンテキスト化されていないデータの問題だけがいつまでも残ることになったのです。
機械学習(ML)を導入して予測アルゴリズムを開発した企業は、信頼できる品質のデータを持つことがいかに重要であり、ヒストリカルデータが常に信頼できるわけではないということをすぐに理解しました。また、データドリブンのイノベーションをサポートするにはデータガバナンスが必要ですが、多くの組織は、その実現に必要な要件に対応できていません。
実際には、運用アセットがさらに複雑さを増し、つながり、インテリジェントになり、さらに多くのリアルタイム情報も提供するようになるにつれて、計画・運用・メンテナンスを可能にするデータドリブンの意思決定がますます複雑になっています。これを大局的な視点から考えると、製造、石油・ガス、ユーティリティ、鉱業にわたる組織は、毎日の運用・制御データのスループットが今後12か月間で16%成長すると見込んでいます。マーケットインテリジェンスプロバイダーであるIDCは、これらの組織のサイロ全体にわたる運用によって毎日生成されるデータを測定しており、産業分野全体のデータとその使用の将来的な拡張をモデル化しています。運用のデジタル化が拡大していることを考慮しても、2025年にはこのデータの約30%しか十分に活用されないとIDCは予測しています(図5)。
課題
データの価値をかなりの程度まで引き出している組織は、4社中1社にとどまります。データの分散に加え、データを接続、コンテキスト化、管理するためのツールとプロセスの不足が、デジタルトランスフォーメーションの妨げとなっています。
機会
産業向けDataOpsを利用することで、運用・制御データ分析ライフサイクルの価値実現までの時間、品質、予測可能性、規模が確実に向上します。また、産業向けDataOpsは広範囲の組織での新しいデータ管理方法に向けた足掛かりでもあり、データ多様性の高まりに対処し、データユーザー数の増加に対応します。
分野としてのDataOps
産業向けDataOpsを詳細に検討する前に、銀行、小売、医薬品など、DataOpsをいち早く導入した業界がデータ運用化の課題にどのように対処したのかを見てみましょう。
重厚長大産業は多くの固有の課題に直面しますが、価値を引き出すためのデータの運用化に関する幅広い課題は多くの分野で共有されています。この普遍的なニーズは分野としてのDataOpsを生み出し、さまざまな領域で勢いを増しました。
IOTの急増によって、データ、およびデータの可能性が世界中のビジネス戦略の最前線に躍り出ました。有意義な変化を推進するデータの可能性に向けて世界が突き進むにつれて、DataOpsがエンタープライズでのデータ運用化のリーダーとして浮上しました。
第1章のForresterによる定義を見て分かるとおり、DataOpsの威力は以下の機能にあります。
「ソリューションの実現、データ製品の開発、データのアクティブ化によって、インフラストラクチャからエクスペリエンスに至るすべてのテクノロジー階層でビジネスの価値を実現する機能」
「2023年までに、組織の60%がDataOpsプログラムの実装を開始することになるでしょう。これにより、データおよび分析のエラーが80%減少し、分析結果の信頼性およびGen-D作業者の効率が向上します」
DataOpsのプラットフォームは、データ作業者が自動化されたワークフローを展開して、産業データソース(従来の運用機器やテクノロジーを含む)からデータを抽出、取り込み、統合するのに役立ちます。
DataOpsでは、データの品質、変換、強化のためのワークベンチ、さらにはデータのコンテキスト化とモデル化のために産業の知識、階層、相互依存性を適用するインテリジェントなツールを利用できます。これは、人、マシン、システムが利用する特定のアプリケーションサービスから入手できます。
DataOpsの直接的な利点と間接的な利点
効率的なデータ管理
DataOpsは、指定されたガバナンス境界内でデータを安全かつ自由に操作・使用するための自動化されたデータプロビジョニング、管理ツール、分析ワークスペースにより、データ作業者の生産時間を最大化します。このアプローチによって、メタデータ管理、非構造化データ管理、データ統合など、データ管理のさまざまな側面に対応するAIベースの自動化による強化が可能になり、データ作業者はユースケースの開発にさらに多くの時間を費やせるようになります。
データアクセシビリティの向上
多くの組織において、現在のデータの使用は、サイロ全体にわたる分散、不規則な統合、1か所に集められたアプリケーションのアクセシビリティによって制限されます。データソースがどこに接続されている場合でも、データには、データの起源でドキュメントが制限されていることによるコンテキストの不足、構造またはタグ付けの不一致による情報の損失が起こりがちです。
DataOpsテクノロジーは、AIを使用して大量のデータを迅速に取り込み、コンテキスト化することができます。また、データアクセシビリティの向上により、DataOpsは組織でのビジネスクリティカルな情報へのアクセスにパラダイムシフトをもたらします。これにより、意思決定の質が改善され、リスクが軽減され、データイノベーションの障壁(およびスキル)が緩和されます。
ユースケースの迅速な開発とアプリケーションの使用可能性
DataOpsが目的としているのは、概念実証(PoC)を迅速かつ安価に設計できるようにし、その運用化とスケーリングに使用するツールを提供することによって、データの価値実現までの時間を短縮することです。
副産物としてのエンタープライズデータガバナンス
DataOpsを使用することで、企業はデータを管理するための基本原則を設定し、実施できます。このアプローチの実装に成功すると、テクノロジー、プロセス、組織の構造に一貫性とROIがもたらされ、運用のデータ品質、統合とアクセシビリティ、および管理が向上します。DataOpsのプラットフォームは、追跡、監査、マスキング、衛生のツールを使用して、データセキュリティ、プライバシー、コンプライアンスを強化する必要もあります。
産業向けDataOpsが重厚長大企業に潜在的な価値をもたらす
産業変革の推進力となる最有力候補は、紛れもなくDataOpsです。
新たに生まれている包括的な分野としてのDataOpsの定義はビジネス環境全体にわたって意味がありますが、産業においては特に重要です。すべての組織が抱いていた従来のデータの課題が、産業分野において(運用結果と固有のデータの複雑さの両面で)さらに重要になるだけではありません。産業独自の固有の課題もあります。
データは産業のコンテキストで利用可能な、有用かつ価値のあるものでなければなりません。
産業界が変化を求めて突き進む中で、データの可能性はすぐに失望へと変わりました。デジタルの実行を示す取り組みにおいて、多くの企業がAIの誇大宣伝を受け入れています。14これによって、直ちに実証できるデジタルPoCはもたらされていますが、真に運用化された(さらに、あまりスケーリングされていない)具体的なビジネスのOPEXの価値を得るには至っていません。
産業用データの洞察の価値を十分に引き出すには、データの運用化をビジネス戦略の核にすることが不可欠です。このことは、安全性、効率性、サステナビリティにわたるミッションクリティカルなユースケースの作成とスケーリングにつながります。データは産業のコンテキストで利用可能な、有用かつ価値のあるものでなければなりません。ここで、産業組織でのDataOpsの展開に関連する重要なステップ、機会、課題について考えてみましょう。これこそが、データから十分な価値を引き出すための道です。
産業用データを利用可能にする
産業でのデジタル化の価値の潜在力を活用する最速の経路は、適切な状況において、適切な問題に対する適切なデータを適切なタイミングで適切なユーザーに提供することです。とは言え、産業用データへのアクセスは依然として容易ではないのが現実です。データはさまざまなシステムに閉じ込められたままになっているため、データサイエンティストは何時間もかけてデータを探し、意味があるように寄せ集め、分析のために準備する必要があります。
データを信頼する
産業企業は使用開始するデータを信頼できなくてはなりません。これは単純に失敗のコストが高すぎるからです。
We can’t operationalize unless we trust the data. If something fails and we can’t provide auditability we are finished as an industry.
Digital Operations Manager Aker BP
分析対象のデータの性質を考えると、産業は特に困難な課題に直面しています。このデータは標準的な表形式のエンタープライズデータの範囲を越えています。運用から収集されたデータの大部分はプロセスと計器のデータを中心に展開し、その意味を理解するには特定分野の専門知識が必要です。
産業に非常に固有であることに加え、収集された時系列データには独特の課題が伴います。ストリーミングデータを扱う人は誰でも、データの品質と整合性がデータサイエンティストにとっての主な悩みの種であることを理解しています。データ品質の課題は確認が難しいので、常時監視の重要性を強調し、継続的に実施する必要があります。
IT/OT/ET/Xデータのコンバージェンス
従来のデータサイロは、データから価値を引き出すうえでの障害になっています。企業は産業向けDataOpsを最大限に活用して、アセットとデータのライフサイクルをIT、OT、ET (エンジニアリング技術)、X (その他のタイプ)のデータにわたって展開する統合プロセスを開始できます。結果として生成されるコンバージドデータは、組織全体で回復力のある意思決定をサポートし、本格的なデジタルツインアプリケーションの潜在能力を引き出します。
テクノロジーの境界を越えた進歩により、IT/OT/ET/Xデータのコンバージェンスがかつてないほど可能に
IT/OT/ET/Xデータのコンバージェンスは、ITの専門家を設備技術者にすることでもなければ、マシンオペレーターをデータサイエンティストにすることでもありません(ただし、後者はそれとは関係なく実際に起こっています)。そうではなく、統一された目標とKPIを利用して運用実績を向上させるために、以前はばらばらだった特定分野の専門家(SME)、文化、プラットフォーム、OTおよびITチームが展開したデータを調整し、まとめる戦略を遂行することです。
このことは実際に、IT、OT、ET、およびその他のデータタイプ(オーディオビジュアルデータなど)をコンテキストに基づいて融合する新しいデータとデジタルプラットフォームの採用を通じて起こっています。これにより、エンタープライズ内とそのパートナーエコシステム全体の両方において、増加するデータ利用者のオーディエンスがこのコンテキスト化されたデータを便利に利用できるようになります。
データの活用
産業データは、統合およびコンテキスト化され、産業企業の内外のすべてのデータ利用者(人間およびマシン)による安全な利用、探索、実行が可能な場合に、本当に役に立つものになります(運用目的に適したものになる)。これは、センサーデータ、プロセス図、3Dモデル、イベント履歴、アセットモデル、非構造化データを含む、各種のソースおよびフォーマットすべてを含むものでなければなりません。
コンテキスト化
データのコンテキスト化では、アセットまたは設備をさらに明確に理解するためにすべてのデータを接続し、データソースとタイプの間に意味のある関係を確立する必要があります。これにより、オペレーション全体にわたってアセットから関連するデータを探し、利用できるようユーザーを支援します。これが、産業向けDataOpsプラットフォームの核となるべきものです。
たとえば、石油技術者は油井現場の電動水中ポンプから伝送されるセンサーデータを理解しますが、データサイエンティストは理解できない可能性があります。コンテキスト化によって、アセット階層にあるポンプIDをそのセンサーデータおよび関連の作業指示書にリンクし、アセットの3Dモデルに接続します。
同様に製鋼業では、基礎となる化学物質および物理法則のしっかりとした知識がなければ、データサイエンティストは予測品質および鋼グレードのモニタリングの複雑さを把握できない可能性があります。ただし、この異常検出のケースでは、3Dモデルや知識グラフによってさらに多くのコンテキストが与えられる場合は、運用のコンテキストを視覚化してモデルおよびデータアプリケーションを開発できます。
産業向けハイブリッドMLOpsの有効化
産業向けDataOpsのプラットフォームでは、データドリブンの統計と物理駆動型のプロセスモデリングおよびシミュレーションの組み合わせを利用できます。各アプローチには長所と短所がありますが、この2つのハイブリッドに基づくMLモデルを使用すると、多くの場合、最良の結果が得られます。これらのツールは、ハイブリッドMLモデルを開発、トレーニング、管理するためのサードパーティ製のAIツールおよびその他の必要なツールと互換性のあるワークフローを開発者に与えます。これによって、開発者はユースケース固有のデータサブセットを効率的に、そして希望するスケールで運用化できます。
さらに複雑さを増す状況
大規模に展開している、サイロ化された産業組織には、固有の課題があります。たとえば、異なる指揮命令系統、さまざまな分析ワークフロー、相反するビジネス上の利益、さまざまなインセンティブなどがあります。産業が複雑さから解放されるには、ツールとテクノロジーが変化の原動力とならなければなりません。
さらに追い打ちをかけるように、AI/MLの台頭と、データサイエンティストを見つける困難さとが相まって、データモデリング、データソースの可用性、データ整合性、すぐに使用できるコンテキストメタデータに独自の要件が課せられています。多くの場合、これらの要件は従来のBIユーザーの要件と大きく異なります。
産業のデジタル化プロジェクトに従事するデータエンジニアは、2010年の非産業分野を連想させるやり方で、主要なソースシステムデータへのアクセスに取り組んでいます。たとえば産業企業は、小売業の他社と同じ課題に直面しているだけでなく、IT/OTコンバージェンスの結果として生じる課題、ならびに関連する非従来型のITのみのデータ速度、多様性、および量に基づく課題の上位セットも示されています。
データの価値を高める
データの価値を最大限に引き出すには、高度なモデルを適用して最適な意思決定に導く洞察を生み出し、オペレーターが自信をもって行動できるようにする必要があります。要するにこれは、価値を引き出すためにデータを運用化して本番環境に移すということです。
高度なモデルでは、データサイエンスと物理学を組み合わせて合成データと高度な洞察を生み出します。これは、スケールのための機械学習と深層学習で補完されます。信頼性ある予測と実行可能な洞察をもたらすには、観察、分析、最適化が非常に重要です。
DataOpsの民主化
産業向けDataOpsのプラットフォームは、ローコードまたはノーコードのアプリケーション開発ツールとモデルのライフサイクル管理ツールによってデータユーザーを支援します。これにより、DataOpsが民主化され、より協調的な作業モデルが促進されます。ここで、専門家ではないデータユーザーは、データ管理タスクを実行し、指定されたガバナンス境界内で高度な分析を独自に開発できます。データの民主化は、プロセスの知識の保存と技術的な継続性の維持に役立ちます。したがって新人のエンジニアは既存のモデルをすばやく理解し、管理し、その価値を高めることができます。
概念実証の先へ
往々にして、デジタル運用のイニシアチブはパイロットのスケーリングに時間がかかりすぎたり、費用が掛かりすぎたりといった「PoC地獄」に陥ります。足を引っ張っているのは、IT/OTとOT/データサイエンスの分断に加え、コンテキスト化された品質データの作成とアクセスを大規模に実施できないことです。
産業向けDataOpsのプラットフォームは、データユーザーを本質的に異なる運用・制御データのソースに接続することによって、ユースケース運用化の途上にあるこうした分断の穴埋めをします。標準的な産業のユースケースのMLライブラリのおかげで、開発者はデータの収集およびモデルの開発とトレーニングの時間を節約できます。データサイエンティストはこのライブラリを活用し、コンポーネントレベルのデータとともに使用できます。ユースケースが開発され、工場の1つのコンポーネントの成果が満足できるものとなったら、アセットデータのコンテキスト化によって工場またはフリートのレベルにスケーリングできます。
重厚長大産業での一般的なユースケースの例として、メンテナンスワークフローの最適化、エンジニアリングシナリオの分析、インタラクティブかつ共有可能にするためのアセットP&ID図(配管計装図)のデジタル化、アセット管理をサポートする3Dデジタルツインモデルなどがあります。
産業向けDataOpsを採用するときの考慮事項
IT/OT/ET/Xデータの潜在力を余すところなく引き出し、従来の運用モデルを一変させるために、重厚長大産業の組織は産業向けDataOpsに目を向ける必要があります。産業向けDataOpsを開始するときは、以下を考慮する必要があります。
- AIとは、事実に基づく意思決定にも、その意思決定をサポートするデータの効率的な管理にも対応する重要なツールであると考えてください。人間による「中間点」でのデータ処理を省略することが重要です。
- DataOpsの価値を十分に得るには、「データの民主化」が非常に重要です。データ抽出能力を最大化することで、既存のITおよびOTアーキテクチャでDataOpsを実現しやすくなります。これにより、追加のシステム統合およびOTデータソースへの投資の必要性が抑えられます。
- IT/OT/ET/Xデータに対応する強力なデータガバナンスモデルを構築します。これにより、どのように新しいデータが接続され、データアーキテクチャ全体に統合されるのかが決まります。これは、データおよび分析ビジネスユーザー数の増加にも対応します。
- データの集中化よりもデータの整理を優先します。対象となるユースケースの明確なリストを考慮して、関連するすべてのデータソースの接続およびマッピングの推進を開始します。ガバナンスモデルの一部として、新しいデータソースにはすべて、接続、タグ付け、共有、および統合計画が必要です。
- DataOpsのプラットフォームすべてに同じ能力が備わっているわけではありません。目標、産業での実績、および特定分野の専門知識を調整するには、選択基準を推進する必要があります(プロバイダーの評価の完全なガイドについては、付録を参照)。
理論から実践へ
前章までで述べたとおり、産業向けDataOpsでは、組織は順調なスタートを切るために重要な策を講じる必要があります。第一に、データ関係者間での強力な結束が必要です。データサイエンス部門とIT部門はデータアクセスとリソース割り当ての範囲をはるかに超えて協力する必要があります。これに対し、事業部門は一般的な需要および検証のステージをはるかに超えてデータプロジェクトに関わる必要があります。
組織の分断によって、企業は大規模なデータにアクセスできなくなるため、アセット分析パイロットが長期化し、運用化のコストが高くなりすぎます。こうした組織および運用上の溝を埋めることは、重点的な取り組みとリーダーシップが要求される調整策です。
適切なツール(機能が豊富で、直感的、スケーリングが容易なツール)の展開によって、永続的で積極的な変化を促進することができます。
「DataOpsとは、ソリューションの実現、データ製品の開発、データのアクティブ化によって、インフラストラクチャからエクスペリエンスに至るすべてのテクノロジー階層でビジネスの価値を実現する機能です」
ここからは、産業向けDataOpsの斬新なアプローチの核となる原則です。この章では、データから最大限の価値を引き出す途上で指針となる必須の概念を分かりやすくご説明します。この記事をお読みの方の中には、DataOpsの一般原則(非常に優れた DataOps Cookbook に示されている原則など)の長いリスト(図10)に精通している方もいるかもしれません。また、進歩的なテクノロジーコンサルタント会社が提供するDataOpsの詳細な評価基準(図11)もご覧になっているかもしれません。
DataOps関連の一般的な資料のほとんどが有用な背景情報を提供しているのに対し、本書は重厚長大産業の組織がデータを運用化して価値を引き出せるよう支援するために、具体的かつ実践的な指針を提供することを目的としています。
弊社が注力しているのは産業向けDataOpsであるため、ここでは、まさに産業オペレーションに注力しているデジタル化のリーダーの観点から原則を説明します。
産業向けDataOpsの7つの原則
1.PoCを実施しない
CFOにとって、PoCは価値がありません。開始するデジタル化のユースケースはすべて、コードの記述を開始する前に、本番環境で大規模にライブ実行されるよう設計しておく必要があります。
PoC地獄は、ほとんどの人が経験したことがあります。人によっては今まさにその状態にあります。その理由は容易に理解できます。近年、産業企業の利害関係者全員(特に公開市場、同業他社、業界誌)にデジタル化のユースケースを示すという、善意からの(ただし、場合によっては強迫的な)ボトムアップ型兼トップダウン型の取り組みが見られます。
残念ながら多くの場合、本当に重要な価値である本番環境での運用デジタル化ソリューションが提供される代わりに、分かりやすいデジタル化の紹介が優先されるという結果になっています。短期間でのデジタル化の成功という錯覚が、正真正銘の本番環境での成功を妨げているのです。
この状況で留意すべきことは、PoC自体が悪いものではないということです。運用のスケーリングの前にユースケースを検証することは、理に適っています。運用のスケーリングが全体的なデジタル化の枠組み、テクノロジーアーキテクチャ、および実行されるプロセスに組み込まれていない場合に、課題(およびその結果として起こる実際の価値獲得の失敗)が生じます。つまり、PoCを終える前に、実行アーキテクチャで、理論上のROIの可能性だけでなく、運用上の本番環境のスケーリングを考慮する必要があるのです。
産業向けDataOpsのベストプラクティスに根ざした体系的なプラットフォームアプローチに従い、デジタル化のユースケースを実施します。これにより、企業はPoC地獄のサイクルから脱却し、本番環境に大規模にもたらされるユースケースのイノベーションに注力できます。
「DataOpsとは、ソリューションの実現、データ製品の開発、データのアクティブ化によって、インフラストラクチャからエクスペリエンスに至るすべてのテクノロジー階層でビジネスの価値を実現する機能です」
2.データ製品で考え、データドメインで実行する
大規模に、そして重要な運用の場合に、データを運用上有用なものにするには、そのデータを製品化する必要があります。データを製品化するには、いきなり企業規模のマスターデータ環境を相手にするのではなく、最初は最も価値のある運用・制御データのドメインに注力します。
クラウドデータストレージの進歩と柔軟性のある処理によって、我々は、企業内および企業周辺のすべてのデータ利用者が常に安全なデータにアクセスできる初期の時代へと押し出されています。それでもやはり、同様の大きな変化に対するニーズが依然として急激に高まっているのが、対象のデータドメインに関するビジネスの専門知識を踏まえた、データエンジニアリングとデータ管理の部分です。
データ可用性から、このようなサービスとしてのデータ製品(図13)に移行してこそ、データスワンプを実際のビジネス価値を生み出す運用・制御データアーキテクチャへと変換できるようになります。
サービスとしてのデータ製品の提供にうまく移行したいと考えている組織は、データ製品の所有権の変化を受け入れる必要があります。必要な移行とは、一元化されたデータチーム(デジタルまたはデータのセンターオブエクセレンス(CoE)など)から協力的な組織への移行です。この組織では、主要なビジネスツールでデータを生み出している各事業部門が各データドメインを共同で所有します。
結局のところ、コンテキストにおけるデータを最もよく理解しているのは業務運用チームです。したがって、業務運用チームは、他のデータ利用者にサービスとしてのデータ製品を伝え、提供する、最適な立場にあります。
データ製品とは何か、そしてサービスとしてのデータ製品のモデルを定義づけるものとは
- データ製品はチームスポーツ
データチームはデータを使用して特定の問題に取り組むために、業務運用チームと連携します。 - 所有権とサポート
データ製品には、所有者、サポート、サービス品質保証(SLA)、および明確な定義があります。 - 責任共有モデル
データ製品には、データエンジニアだけでなく、データドメインのチーム全体に基づいたSLAがあります。 - 双方向性
サービスとしてのデータ製品の流れは双方向であり、データドメインのチームから会社、会社からデータドメインのチームへと流れます。 - 特定分野の専門知識の融合
特定分野の専門知識がデータ製品自体に直接統合されます。 - 未処理データだけでなく、データの洞察を提供
データ製品チームのメンバーは、データ製品について他者よりも多くのビジネス機能の経験を持っており、行および列とは別の洞察を提供する責任があります。 - 信頼性ある高品質のデータを重視
サービスとしてのデータ製品によって、価値を重視するサービス指向のビジネスパートナーシップと、信頼性とデータ品質を重視する製品指向のSLAとが融合します。
産業向けDataOpsの実装を成功させるには、従来の一元化されたデータアーキテクチャからドメインデータアーキテクチャ(データメッシュ)に移行することが不可欠です。これにより、一元化されたモノリシックなデータレイクおよびデータウェアハウスに関連する課題の多くが解決されます。目標は、データの行と列を提供することではなく、ドメインベースのサービスとしてのデータです。
ドメインデータのアーキテクチャが機能するために、データ製品の所有者チームは、データが発見可能で、信頼でき、自己記述型であり、相互運用可能であることを確認する必要があります。また、安全で、グローバルなアクセス制御によって管理されていなければなりません。つまり、データ製品をデータとしてではなく、サービスとして管理する必要があります。
3.データが人間の言葉を話す必要がある
データから価値を生み出せるかどうかは、より多くのデータを収集することではなく、データコンテキスト、そして業務運用におけるデータ利用者の解釈可能性によって決まります。
データ量、速度、多様性、価値創造への期待の急激な増加に直面し、企業は大小を問わず、さらに良いデータ利用者となる(あるいはもっとデータに詳しくなる)ために従業員のスキル向上を急いでいます。Gartnerはデータリテラシーを公式には「置かれた環境や状況の中で、データを読み、書き、伝える能力」と定義し、もっと砕けた場面では「データを話せますか」と表現しています。データリテラシーには、データソースおよびデータ構造の理解、データに適用される分析方法および手法、ユースケースの適用とその結果として生成される価値を説明できる能力が含まれます。
Learn more about data literacy
産業においては、生産とメンテナンスのデータ利用者(産業用AI革命の最前線にいるデータ利用者)の大半が、ドメインおよびドメインデータに関する詳細な専門知識を持つ特定分野の専門家(SME)です。ただし、この専門家はデータエンジニア、データベーススペシャリスト、ソリューションアーキテクトではありませんし、無理にそうなる必要もありません。
データリテラシーを大規模に、そして全データドメインにもたらすには、我々のデータ管理インフラストラクチャが難局に対処し、新しいデータ利用者の高まる需要に対応する必要があります。産業向けDataOpsの核心にあるのは、この事実に対する承認です。
この根本的な真理の認識が深まっています。調査によると、ITおよび運用を担当する産業界のリーダーの79%が、データは特定分野の専門家(SME)のサポートがなくてもデータ利用者が理解できるほど、分かりやすいものでなければならないという点で意見が一致しています。つまり、データが人間の言葉を話す必要があるのであって、その逆ではありません。
Learn more about contextualization
Data has no value unless the business trusts it and uses it. CDOs and data stewards are responsible for working with the business to define the success factors and ways to measure the ability to meet these expectations.
Forrester
このレベルの真のデータリテラシーを実現するには、データ製品で考え、データドメインで実行することが極めて重要です(前述の原則2を参照)。
AIで強化されるアクティブなメタデータキュレーションを全面的に利用することも同じく重要です。神経言語プログラミング(NLP)、光学式文字認識(OCR)、コンピュータービジョン、訓練されたオントロジー、グラフデータモデルを活用することで、IT/OT/ET/Xデータの自動的なコンテキスト化がますます促進され、人間による直感的な、またはプログラムによるデータの発見と使用が可能になります。
産業がメタデータへの投資から獲得するリターンは、データ自体への投資よりも10倍高くなります。
メタデータは「他のすべてのデータポイントの使いやすさ、分かりやすさ、実用性、機能性の強化に使用されるデータ」と定義できます。Gartner (2021).The State of Metadata Management:Data Management Solutions Must Become Augmented Metadata Platforms.[2021年3月26日]
4.ビジネス技術者がデータヒーロー
データ顧客ターゲットのペルソナを持つデータプロダクトマネージャーはビジネス技術者であり、データエンジニアではありません。真のデジタル化が起こるのはデジタルCoEの外であり、ビジネスとテクノロジーの新しいタイプのハイブリッド(ビジネス技術者と呼ばれます)のアクションによる、中核的な業務運用の中で起こります。これらの業務分野の担当者はすでに、セルフサービスの発見と複数ソースのデータオーケストレーションをサポートする産業向けDataOpsの機能が欠如していることに、しびれを切らしつつあります。
このような機能によって、優れた意思決定を行い、競争力を高めることができます。同時に、産業向けアプリケーションの開発者はAPIを使用して現代のクラウド-エッジ間のマイクロサービスアプリケーションを構築するために、信頼性ある、一貫したリアルタイムのデータを切望していますが、これらのデータは業務運用内に存在することがあまりにも多くなっています。
ビジネス技術者などの新しいデータ利用者ロールの数が増えるにつれて、企業のIT部門では直感的なサービスとしてのデータ製品に対する、さらに高速で自律的なアクセスを実現する必要性が高まっています。
事業ドメインへのセルフサービスの権限付与は、当然ながらITのビジネスにとって朗報であり、ドメインデータ製品のコラボレーターに魅力的な新規採用ルートをもたらします(前述の原則2を参照)。
当然ながら、産業向けDataOpsプラットフォームだけでは十分な答えになりません。ビジネス技術者が産業データ利用者の次のセグメントへの道を開いている場合でも同様です。エンタープライズデータダッシュボードとローコードアプリケーション開発の機能で補完する必要があります。幸い、現在はどちらも産業全体ではるかに容易に入手できるようになっています。
最後に、IT部門と事業部門全体で信頼と協力関係を構築するには、運用の専門家を「シチズンデータサイエンティスト」と呼んではなりません。彼らは特定分野の専門家(SME)です。また、ドメインデータ製品の配布およびビジネス技術者の擁護のための最良のビジネスパートナーである可能性もあります。「シチズン」ではありません。
出典: Gartner 2020 Digital Friction Survey (2,015名のビジネス技術者)
5.指標としての自律型産業
産業向けDataOpsの目指すところは自律型産業であり、ユニバーサルデータの可用性でもなければ、さらに優れたデータエンジニアリングでもありません。
産業向けDataOpsは適時で現在価値があるだけではありません。将来の基盤となるデータインフラストラクチャなのです。その理由は、提供されるデータドリブンの運用機能が、自律型産業の目標であるインダストリー4.0の約束の達成にも同様に必要だからです。
これが常に、指針となる目標、つまり真の指標になります。
図16は、産業向けDataOpsの機能が自律型産業に向けた産業変革の行程にどのようにつながっているのかを示しています。
産業向けDataOpsの強固な基盤がなければ、データ、データモデル、およびデータドリブンの推奨事項の信頼性は低いままであり、第1または第2レベルのデータドリブンの運用改善を超えて進歩することができなくなります。
クローズドループのインテリジェントな生産システムを指標として用いた完全自律の意思決定の場合は、すでにかなり進行した状況で我々に道を切り拓いていますが、ほとんど同じ核となるテクノロジー機能が必要です。
産業向けDataOpsは、単なるレポートデータからデータドリブンの運用までのキャズムを乗り越える鍵となります。
6.古いテクノロジースタックが機能しない
エグゼクティブサポート、変革の思考様式、従業員のスキル向上すべてが必要です。ただし、適切な新しいツールがなければ、効果は発揮されません。
企業環境全体に影響がありますが、AIやクラウドコンピューティング、安価なデータ収集などのテクノロジーの破壊的な潜在力は、現在多くの産業分野に非常に大きな影響を与えています。これらのテクノロジーは伝統的に、厳しい規制、新たな競合の脅威が低いこと、および極端な資本集約度による破壊の影響から切り離されていました。今後はそうではなくなります。電力・ユーティリティはおそらく最大の破壊を経験している分野です。組織は、ESGおよび活動家の資本配分、社会でのサステナビリティの圧力、再生可能エネルギー、分散型エネルギー資源(DER)、電気プロシューマーの増加といった破滅的な事態に直面します。
さらに悪いことに、電力・ユーティリティ分野は非常に時代遅れのソフトウェアテクノロジーアーキテクチャに大きく依存しています。このアーキテクチャは、主として静的環境でのクローズドな現場レベルの制御用に設計されたものです。調整するだけでなく、目標を達成するために、エネルギー企業は次世代のデータおよび分析のアーキテクチャを積極的に再検討しています。絶え間ない変化、コラボレーション、リアルタイムのデータ、およびイノベーションによって定義されるように設定されたアーキテクチャです。
このような重大なビジネス環境とテクノロジーの変化にもかかわらず、新しいソフトウェアテクノロジーが果たすべき役割が軽視され、次のような一般的な経営陣のフレーズが使用される傾向にあります。
「テクノロジーは容易に入手できますが、課題が残るのは変更管理と人々の組織です」
「テクノロジー面への対処を開始する前に、文化的変化の影響に対する徹底した評価と計画が必要です」
文化的変化および思考様式がテクノロジーよりも優先されるべきという考えは単純に当てはまりません。我々の産業を混乱に陥れている変革のイネーブラーはすべて著しくテクノロジー主導であるため、テクノロジーから開始する(または、最低でも同時に対処する)必要があります。エグゼクティブサポート、変革の思考様式、従業員のスキル向上すべてが必要です。ただし、適切な新しいツールがなければ、効果は発揮されません。実行するためのツール(変革の具体的な原動力)なしでプロセスまたは行動を変えることは、単純にあまりにも抽象的で、特にエンジニアリングの思考様式から乖離しています。実際、テクノロジーの破壊はテクノロジーから開始します。
では、産業向けDataOpsに力を与える適切なテクノロジースタックをどうやって見つければ良いのでしょうか。ドメインデータの利用者向けのデジタルプラットフォームで提供されるべき主要機能を図15にまとめます。
産業向けDataOpsソフトウェアの正式な評価と選定に役立つ質問を付録(産業向けDataOps RFPガイドライン)に一覧でまとめてあります。この付録は、ユースケースおよび過去の成功事例から、ソリューションアーキテクチャ、セキュリティ、ソフトウェアのメンテナンスに至るまで、考慮事項全般を詳細に網羅しています。提案依頼書(RFP)および類似の調達プロセスをサポートする完全なガイドおよびツールキットとしてご利用ください。ここでは、5つの重要な質問を抜き出して解説します。
産業向けDataOpsのソフトウェアを購入する前に産業企業が質問すべき5つの質問
7.品質が命
スピードは重要です。しかし、脆弱なソリューションを実行した結果、生産に失敗するようであれば、単純に産業では使いものになりません。
2014年、Facebookでさえも開発者向けのモットーを「Move Fast and Break Things (すばやく動いて破壊せよ)」から「Move Fast With Stable Infra (安定したインフラですばやく動け)」に変えました。Facebookは、急ぎすぎるあまり、どこへ向かっているのかはっきりと分からなくなることを危惧したのです。Mark Zuckerberg氏は 「我々が時間をかけて悟ったのは、他者よりもすばやい行動が役に立たないということです。なぜなら、バグの修正のためにスピードダウンしなければならないので、スピードが改善されなかったのです」と語っています。
こうした慎重さは、デジタルテクノロジーの巨大企業の世界では斬新なものだったかもしれませんが、産業界においては十分に確立された必須事項です。重厚長大産業全体において、あらゆる重要な要因が意味しているのは「早い段階で失敗する」というモットーが適切なことはめったにないということです。
これらの要因には、世間への深刻な影響と長期化するイメージ悪化をもたらす目につきやすい失敗およびサービス停止のリスク、機械類および装置のコスト、従業員の健康と安全、環境への潜在的な影響などがあります。
We can’t operationalize unless we trust the data. If something fails and we can’t provide auditability we are finished as an industry.
Digital Operations Manager Aker BP
ソフトウェア開発とデータエンジニアリングの時代のほぼ全期間(産業組織がサービスを受けている期間と比較して短い方)にわたって、スピードと品質は対立する概念でした。これが特に当てはまるのは、リアルタイム環境で複雑なデータ依存関係を扱うときです。バッチおよびストリーミングデータのソース全体にわたって信頼できる/安全/観察可能なデータパイプライン、および開発中のユースケースに適合する実用的データ品質は、長い間熱望されてきましたが実現できていません。いずれにせよ、スピードが著しく犠牲になります。
産業向けDataOpsを使用する組織は、品質とスピードを両立するために、ソリューションのコンテキストを最もよく理解している開発チームに、リスクとデータ品質の直接的な責任を移します。このアプローチによって、遅く、融通の利かない、高価で一元化されたマスターデータ管理の代わりに、アンビエントなデータガバナンスが有効になります。
産業向けDataOpsを使用する組織は、データ品質スペシャリストではなくビジネス技術者で構成される開発者チームにとって、ユースケース関連のデータ品質制御が容易になるようにする必要があります。つまり、産業向けDataOpsのツールの中でも、事前に構築され、自然なアプリケーションデータテンプレート定義フェーズに直接適用しやすい、最も一般的なデータ品質モデルを提供するツールを探すことです。
「IoTソリューションの多様かつ分散型の性質は、ガバナンスに対する従来の画一的で制御指向のアプローチだけでは不十分であることを意味しています。各組織には、さまざまなタイプのデータおよび分析に対応するさまざまなスタイルのガバナンスを適用する能力が必要です」
ここまでは産業向けDataOpsの理論と基本原則を見てきました。続いては、組織がインダストリアルバリューチェーンにおいて具体的な改善を達成するために、このような理論と原則を現実世界でどのように実行に移しているのかを見ていきましょう。この章では、石油・ガス、電力・ユーティリティ、製造といった現場での事例をご紹介します。
望ましい成果をもたらすために必要な機械とサプライチェーンが複雑であるため、一般的なインダストリアルバリューチェーンは「システムオブシステムズ」と呼ばれる問題のカテゴリーに分類されます。このカテゴリーでは、全体的な課題が、個々のプロセスおよびタスクの複雑さと、それらの相互依存性の両方による影響を受けます。
こうした課題をうまく克服するには、非常にニッチなソフトウェア(個々の石油・ガスポンプの制御システムなど)と企業全体のプロセスを調整・管理するハイレベルなソフトウェア(エンタープライズアセットマネジメントシステムなど)の組み合わせが必要です。
一例として、個々のポンプに最適なメンテナンスを予測するモデルの開発があります。ここでは、サプライチェーン、リソース、リスクの相互依存性を考慮し、ポンプの出力によって、エンタープライズアセットマネジメントシステム(EAM)内で関連するタスクの自動作成がトリガーされます。産業にはこうした潜在的な改善点がたくさんあり、関連するコンテキスト化されたデータをリアルタイムのオペレーションとリンクさせることで改善できます。
テクノロジー、データ、自動化プロセスのこのような融合を全体として捉えることが、インダストリー4.0(第4次産業革命)のコンセプトの中心です。 こうした改善を大規模に処理するために必要なインフラストラクチャの中心にあるのが、産業向けDataOpsです。
さまざまなアプリケーションに対してデータドリブンの改善の開発、スケーリング、管理を確実に行うには、効果的な産業向けDataOpsが絶対に必要です。
産業向けDataOpsの機会
最初に、機会がどこにあるのかを簡単にご説明します。産業の核となる推進要因は生産です。つまり、石油・ガスの採取と処理、発電と送電、商品の製造などが考えられます。
スループットの最適化は、生産量と生産品質(生産物が原材料ではないとき)の両方の観点から非常に重要です。スループットの最適化にはアセットと装置が必須であるため、必然的に、これらのアセットのメンテナンスがスループット向上とコスト削減の重要な手段の1つとなります。したがって、メンテナンスプログラムの主要な目標は、アセットライフサイクルの観点での稼働時間の最大化とコストの最小化です。生産の最適化とメンテナンスはどちらも、産業向けDataOpsのアプローチを用いてデータドリブンの改善を行うのに適した主要な領域です。
現場作業員の効率的な管理は、産業向けDataOpsを用いた改善の機会のもう1つの主要な領域です。多くの場合、現場の実務者は装置のメンテナンスとアセットのメンテナンスを区別しており、ここでは、別々の専門家が適切な優先順位付けとリスクアセスメントを保証し、この2つの計画の立案を行っています。
目標は変わらず、最小の生涯コストで生産への悪影響を最小限に抑えることです。このプロセスを最も端的に表しているのは、装置のオイル交換か、手すりの防食処理かに関係なく、何らかのタスクが現場の担当者によって実行されるということです。
生産の最適化、メンテナンス、現場作業員の効率と同様に、サプライチェーンも産業向けDataOpsが変革をもたらす領域に含まれます。弊社は、(特定の産業における)投資計画の立案と実行に加え、地下の石油・ガスに対する探査、掘削および坑井建設、貯留層の領域を追加できます。
産業向けDataOpsが約束するのは、データドリブンによる改善を展開するペースの向上です。これには、全アセットにわたる個々の改善のスケーリングが含まれます(対象のアセットが装置を表しているか、より大規模な設備を表しているかは関係ありません)。それでは、データ対応のユースケースと、そのユースケースのサポートに必要なデータオペレーションについて、実際の例を詳しく見ていきましょう。
重要なアセットの長寿命化とサービス時間の削減
課題
Aarbakke社は多くの製造業と同様に、重要でありながら低性能の装置(特に、コンピューター数値制御(CNC)マシン)によって引き起こされるパフォーマンスの課題に直面していました。石油・ガス産業のサプライヤーであるAarbakke社は、短納期に加え、厳格な品質要件を満たす必要がありました。
以前は、サービスマネージャーが重大な問題を把握するには、メールまたはメモによるオペレーターの記録に頼っていました。このとき、サービスマネージャーは各マシンの場所まで物理的に移動し、アラームが発生していないかローカルログを手動で確認していました。この従来の作業プロセスでは応答時間に制限があり、その結果としてスループットが低下し、低品質イベントが発生していました。
Aarbakke社は、重要な装置を理解し、アクティブなマシンアラーム、履歴アラーム、ほぼリアルタイムのセンサーデータに対応する現場全体の可視性を提供するために、新しい作業慣行が必要でした。この企業のチームは、産業向けDataOpsを使用して可視性を高めることで、適切な作業の優先順位付け、効率的な作業プロセスの採用、低品質イベントの繰り返しを防止するための知識の獲得が可能であることを知りました。
ソリューション
Aarbakke社の選択した産業向けDataOpsソリューションは、メーカーのソースシステムからのデータを統合するために使用されました。これにより、すべてのユーザーがアクセス可能な統合データモデル内にすべてのデータがコンテキスト化されました。データソースには、プロセス(時系列)データとイベントデータ(装置アラームとメンテナンスアクティビティ)の両方が含まれています。
必要なデータすべてを実装した統合データモデルを使用することで、Aarbakke社による重要装置の管理をさらに効率化するアプリケーションの迅速な開発が可能になりました。配布されたアプリケーションを使用することで、アラームとイベントをアセット別に分類した、現場全体にわたるすべてのCNCマシンのコンテキスト化されたビューが提供されました。サービスエンジニアは、ペルソナベースのフィルターを使用して、ターゲットを絞ったメンテナンス作業を実施できるようになりました。
効果
- マシンの長寿命化によってサービスコストが20~30%減少するとともに、故障の件数および全体的な停止時間も減少しました。
- 組織の可視性により、課題への対応がさらに迅速になりました。
- 品質が改善し、スループットが向上しました。
- 突発的な故障の前に介入するアセットの優先順位付けが可能になりました。
- 現場でのメンテナンス作業者に対するサポートが向上しました。
現場でのメンテナンス作業者に対するサポート
課題
製造業の大規模なデジタル化には、関連するすべてのデータにユーザーが現場でアクセスできる必要があります。25 しかし、多くの製造企業においては、データは複雑でサイロ化されたシステム内に閉じ込められており、装置の診断、修理、点検時にメンテナンス作業者が必要な情報に容易にアクセスすることができません。データがサイロ化されていると、毎日の活動でのメンテナンス作業者の作業プロセスが非効率になり、必要な情報を見つけるのに複数のシステムへのアクセスが必要になることも珍しくありません。
ソリューション
2日と経たずに、産業向けDataOpsの適切なソリューションによって横河電機のソースシステムのデータ(プロセス変数、装置情報、履歴イベント、取扱説明書など)が民主化およびコンテキスト化されました。所要時間が短くてすんだのは、コンテキスト化サービスを使用して、工場のアセットのプロセス変数、装置、イベントの間に自動的に関係が構築されたためです。
こうしてコンテキスト化されたデータは、デジタルワーカーのニーズを満たすよう設計された現場のアプリケーションに接続可能となります。タブレットおよびモバイルデバイスからアクセス可能であるため、メンテナンス作業者は、リアルタイムのプロセスデータ、ヒストリカルデータ、ドキュメント、CMMS作業指示書、および写真を現場で利用できるようになりました。これで、すべての装置に付属するタグをスキャンしてすべての関連情報を確認するだけで、アセットを特定できるようになります。
このデータにすぐにアクセスできるため、メンテナンス作業者の効率が飛躍的に向上するとともに、日常のタスクの実行に必要な情報が利用可能になりました。さらに、オペレーショナルデジタルツインが作成され、民主化、コンテキスト化されたデータと3Dモデルが融合しました。このデジタルツインは、甲府工場の400枚の写真を撮影した後、1時間以内に構築されました。コンテキスト化されたリアルタイムのプロセスとヒストリカルデータが3Dモデル内でオーバーレイされるので、ユーザーは強力な視覚化ツールを使用して工場を探索できるようになりました。メンテナンス作業者はこれらの3Dモデルを使用して、1台の装置がプロセス全体にどのように適合するのかについて理解を深め、同じ領域で作成された他の作業指示書を(すべてモバイルデバイスから)確認できます。
効果
- メンテナンス作業者は、現場で作業を実施するときに必要な関連情報すべてにアクセスできます。すべてのプロセスおよびアセットデータへのモバイルアクセスが可能になるため、エラーをすばやく診断し、メンテナンス作業をさらに効率的に実施できます。その結果、作業者の生産性が30~55%上昇します。
- 3Dモデルとコンテキスト化されたデータの融合により、さらに効率的なプロセスで装置を特定し、現場で実施すべき作業の計画を立てることができるので、現場作業員の時間が節約されます。その結果、オフサイトの計画とサポートが向上します。
- ソリューション提供までの時間が1週間もかからないため、数週間の実装期間内で価値がもたらされます。
データドリブンのスラッグ予測で生産を増強
課題
「スラギング」は石油・ガス産業で一般に見られる生産上の課題です。スラギングとは、パイプライン内の三相流(ガス、石油、水)の分離であり、1つまたは複数の相の蓄積により流れがブロックされます。スラギングに影響する要因は一時的な状態(油井の開口、再ルーティングなど)か定常状態のいずれかになります。したがって、シミュレーターとリアルタイムの生産データを組み合わせてスラギングを監視し、防止する必要があります。
ソリューション
Aker BP社の産業向けDataOpsソリューションにより、数千ものライブおよび履歴の時系列データに対するアクセスが可能となります。これらのデータをパターン認識および統計のために継続的に分析したり、運用上の意思決定のために必要なデータ品質を確保したりできます。ライブ生産データがデータ対応のサードパーティアプリケーションと統合され、スラッグの予測に必要となる複雑なシミュレーションとモデルを利用できるようになりました。
自己学習アルゴリズムを使用するハイブリッドモデルに、ライブの運用・制御データが送り込まれました。このアルゴリズムは現場の行動の識別と予測モデルの生成が可能であり、スラギングシナリオの特定に使用されます。Aker BP社はスラギングの事象および関連する生産損失を回避するために、リアルタイムの実行可能な洞察を生産エンジニアに提供する最適化モデルを開発することができました。
効果
- 生産量が1%増加しました。
- スラッグの処理と予測の機能が大幅に改善されました。
- 生産エンジニアがリアルタイムの実行可能な洞察を獲得しました。
- 使いやすい意思決定サポートと、差し迫ったスラギングを早期に警告してくれるアルゴリズムがオペレーターに提供されました。
送配電網事業者で損失の大きい変圧器故障を防止
課題
送配電網において、変圧器は最も高価で重要なコンポーネントです。重量が200トンを超えるものも多い、こうした巨大なデバイスは送配電網内の重要な部分に配置されており、交流回路間に電気を送り、必要に応じて電圧を増減させます。
送配電網事業者では、変圧器の故障が発生することがあります。こうした事象は、一般家庭での停電および電力会社での生産損失の原因となり得ます。最悪のケースでは、変圧器の誤作動によって出火や爆発が起こる可能性があります。修理にも交換にも、高額な費用と時間がかかります。
数百台の変圧器を保有する、ある大手の送配電網事業者は、年に約1回の故障を経験していました。この送配電網事業者は変圧器の定期メンテナンスを実施しており、停電時にすばやく電力を復旧できるよう交換部品にも投資していました。
この事業者は、両方のプロセスの改善に興味を示していました。データは組織が変圧器故障の初期の兆候を発見する際にどのように役立ち、交換部品に対する支出をどのように最適化できたのでしょうか。
ソリューション
この送配電網事業者は産業向けDataOpsのプロバイダーと連携して、そのプロバイダーのソースシステムからの変圧器に関する情報(温度、負荷、溶存ガスの分析、技術仕様、検査記録など)を民主化し、それをデータ統合プラットフォームに取り込みました。
変圧器に関連するすべてのデータに1か所でアクセスできるため、開発チームは送配電網のすべての変圧器に対する健全性指標を計算することができました。この健全性指標がダッシュボード内で視覚化されたことにより、送配電網事業者のエンジニアは全変圧器を一目でチェックし、どのコンポーネントを優先的にメンテナンスすべきかを判断できるようになりました。
効果
- 20~50%の故障低減により、年間200万ドルの節約を達成しました。
- 健全性指標は、変圧器のメンテナンス作業を計画する方法に関して送配電網事業者がデータドリブンの意思決定を行う際に役立ちます。
- 変圧器1台の故障によって送配電網事業者に生じるコストは、最低でも500万ドルです。この送配電網事業者は、今後5年間で故障率を20~50%減らすという目標を設定しました。これにより、短期的に年間約200万ドルが節約されます。
データドリブンのメンテナンスとパフォーマンスベースのサービス提供を実現
課題
業界トップレベルの掘削技術とサービスを提供するMHWirth社は、世界中の石油掘削施設にあるすべての掘削装置の監視とメンテナンスを行うために、戦略上重要な顧客との新しいパフォーマンスベースのメンテナンス契約を取り付けました。28 契約上の義務を果たし、顧客収益性を維持するために、MHWirth社はメンテナンスの意思決定にデータをどのように使用するのかを再考する必要がありました。状態監視と予測メンテナンスのアプローチを取る必要がありましたが、これが難題の始まりでした。世界中のアセットを効率的に調査し、異常を検出するために、ITアーキテクチャをどのように設定できたのでしょうか。実行可能な意思決定を行うには、必要なデータガバナンスと品質を確保することも非常に重要でした。それによって顧客との関係が確立されることもあれば、損なわれることもあるからです。
ソリューション
MHWirth社は装置のライブデータを取得・整理するために、産業向けDataOpsソリューションを実装しました。必要なデータのライブエクストラクターを設定し、基盤となるデータオペレーションの基礎部分としてアセットテンプレートと補助のデータモデルを作成しました。
システム内のすべての関連データがあれば、MHWirth社は自由に選択した視覚化と分析のツールを使用して、掘削装置の現在の状態のデジタルイメージを作成できます。このツールを使用することで、MHWirth社はデータに関する予測分析を実施して適切なメンテナンスプログラムを計画できるようになりました。リアルタイムデータのストリームがモデルに直接入力され、その結果を他の視覚化ツール、アプリケーション、機械学習モデルで利用できるようになりました。
現在、MHWirth社のダッシュボードでは、ヒストリカルデータとリアルタイムデータの両方を使用して装置の実際の状態に関する情報を専門家に提供しています。これが、掘削装置の最大稼働時間を確保し、適切なメンテナンスと収益性の高いメンテナンス契約とのバランスを取るための前提条件です。
効果
- すべての産業データを1か所にまとめ、アセット階層に自動的に関連付けることによって、MHWirth社は自社産業の現状に対する理解を深め、さらに充実した制御を獲得しました。
- MHWirth社のシステムのデータを分析している専門家は、どの装置にサービスが必要であるかを迅速に見極め、行動に優先順位を付け、最適なメンテナンスに関して助言をすることができます。
- 今やこの会社は、真に洞察に満ちたメンテナンスプログラムを開発する機会を得ており、メンテナンスコストを抑制し、装置寿命を延ばし、装置の信頼性を高め、突発的なメンテナンスと停止時間を最小限に抑えています。
- 現在MHWirth社は、掘削会社に提供するサービスに関して継続的なイノベーションを行っており、新たに状態監視保全サービスを追加しています。
視覚化ソフトウェアからの運用効果の拡大
課題
Power BI、Tableau、TIBCO Spotfireなどの視覚化ソフトウェアは、データドリブン化を進めているすべての企業にとっては一般的なものです。29 しかし、データがなければ視覚化ソフトウェアは何の役にも立ちません。データが見つからなければ洞察は生まれず、データに信頼性がなければ洞察は利用できません。こうした問題は、多様なデータ領域、データストア、データ所有者を持つ大規模組織ではよく知られています。
ITを利用してデータをプロビジョニングすることは、それ自体は面倒ですが、よくあるように、ユーザーはどのようなデータが存在するのか全体像を描くことさえできません。データを発見し、Power BIで視覚化し、洞察を生み出すために使用する場合、運用上の意思決定にデータを活用するための十分な信頼を築く上で、データ品質を常に保証する必要があります。視覚化ソフトウェアの運用上の効果を高めるには、こうした課題をすべて克服する必要があります。
ソリューション
適切な産業向けDataOpsソリューションを使用して、ビジネスユーザーは利用可能なすべてのデータを容易に参照し、選択した視覚化ソフトウェアにプロビジョニングしています。データ管理およびデータ品質のツールを使用することで、ユーザーはデータリネージと品質監視を容易に設定できます。これにより、視覚化がいつでも利用可能となり、運用上の意思決定を行う絶好のチャンスが訪れます。
このソリューションを利用してデータがプロビジョニングされるため、ユーザーはデータが存在する運用システムおよびITシステムから独立して、視覚化を構築しています。ADプロバイダーとの連携により、視覚化へのデータアクセスの共有または制限が容易になります。企業はさらにデータドリブンになることができます。ITアーキテクチャ側での複雑なインフラストラクチャプロジェクト、およびユーザー側での長期に及ぶ高価な研修プログラムは必要ありません。
効果
- 組織は、複雑で大規模なデータセットの視覚化にアクセスできます。
- 必要なすべての組織内ユーザーが、シンプルなブラウザービューで大規模なデータの視覚化を利用できるようになります。
- イノベーションを強化するために、ユーザーはユースケースへの即時アクセスを利用できます。
On one hand, change is simple—more of the same. The problem is that ‘the same’ now means everything will continue to change, just faster.
William Mayo
CIO Broad Institute of MIT and Harvard
本書で明らかにしてきたとおり、産業向けDataOpsを開発・改良・利用拡大するためのテクノロジーとノウハウは順調に進んでいます。産業技術とソフトウェアの開発者によって迅速な開発と改良が行われている新生のプラットフォームにより、DataOpsは産業の枠を越えてこれまで以上に利用しやすくなっています。また、分かりやすさも向上しています。
重厚長大産業において、持続可能で経済的に実現可能なデジタルトランスフォーメーションを実現する唯一の道として最も有望なのが、産業向けDataOpsです。この分野の約束の大部分は、イノベーションの民主化に大きく左右されます。現在と将来両方の産業労働者の能力と創造力が、一斉に必要になります。
さらに広範にわたり、公平で、加速する可能性のある産業のデジタル化は、「データ」を話すごく一部の人間(適切な訓練を受け、それに適した脳の神経経路を持つほんの一握りの人)に世界が信頼を置くのではなく、データに「人間」の言葉を話させることによって起こると想定されています。
産業向けDataOpsの啓蒙・検討・採用に手間取ることで、企業あるいは産業全体が百年に一度のチャンスを逃す危険にさらされると弊社は考えます。こうしたチャンスは、現在の状況のように、劇的な変化が起こっている時代に現れる傾向にあります。
産業変革の推進力となる最有力候補は、紛れもなく、産業のためのデータオペレーションである産業向けDataOpsです。
開始する
産業向けDataOpsで何らかの準備作業が必要なのは明らかです。組織のすべてのデータ関係者間で同意と結束が必要です。データを利用可能にし、そのデータにリソースを割り当てるだけにとどまらず、その先へ進むには、こうした結束と協力が必要なのです。リソース割り当て、概念実証、スケーリングの段階をはるかに超えてデータプロジェクトに深く関わるために、事業部門の調整と組織化が必要です。
この点にたどり着くのは、一夜にしてできることではありません。意見の相違を埋め、自分のビジョンを調整するには、長期的な視野と献身的なリーダーシップが必要です。しかし、こうした取り組みによって多大な利益がもたらされ、将来の成功が後押しされます。
準備は万全ですか
本書を読み終えた先には、望み通りのチャンスがあります。産業向けDataOpsの準備状況を見極めるには、まず組織のデジタル成熟度を評価する必要があります。第1章で述べたとおり、デジタル成熟度はデジタルの成功を示す重要指標です。以下のことも繰り返し述べる価値があります。デジタルイニシアチブから得られる実際のROIは、1つの四半期に集中してデジタル化に意欲的に取り組み、利害関係者(または株主)によい印象を与えるよりも、着実なイノベーションと長期にわたる戦略から生まれやすい傾向にあります。
長期的な戦略に自然に注力できれば、それはデジタル化が成熟したしるしです。ツールとプロセスを利用した戦略の構築により、幅広い利害関係者の間でデジタルな働き方が容易なものになります。もう一つのしるしは、きめ細かいレベルと総合的なレベルの両方で、とにかく測定ができることです。繰り返しになりますが、デジタル成熟度は、人、プロセス、データに及びます。デジタル成熟度の評価は、変更管理の多次元的な手段です。
目的と戦略、人と思考様式、価値獲得プロセス、情報アーキテクチャ、データ遍在性に対する評価を行ってから、次に進みます。
産業向けDataOpsで実現できること
第4章(産業向けDataOpsの活用事例)で述べたとおり、主要な組織のいくつかは早期に産業向けDataOpsを開始しており、AI、データ集約型アプリケーション、複雑な調査、および分析にすでに活用しています。
その他の良い例として、MITの研究者が多くの企業にインタビューを行い、新しいアプローチをどのように活用しているのかを明らかにしました。この結果、産業での非常に有益なユースケースが広範囲にわたって明らかになりました。
ある組織は「保有する船舶のメンテナンスを自動化するために、最新のデータ管理手法を使用して並外れた量のデータを処理・分析しています」。これを実行するために、この企業は「数兆のデータポイント」での予測分析を使用して、修理と故障を予測しています。
保有船舶の停止時間を削減するために、データのマネタイズに注力する企業もあります。これにより、船舶の稼働を維持しながら時間とコストを節約できます。この会社は故障に向かう傾向をアラートになる前に特定し、現在と将来の船舶性能を理解するためにデータを使用しています。
産業向けDataOpsの利点を活かす用意ができているもう1つの分野は、自律走行車のオペレーションです。主要な自動車会社が自律走行の研究開発を強化するにつれて、自律走行車およびハードウェア(信号機、路面センサー)によってテレメトリやイメージングを含む膨大な量のデータが生成され、イノベーションの基礎としてさらに活用されることでしょう。
単一のアセットだけで、Aker BP社は時間の節約と生産損失の減少を実現しながら年間600万ドルの節約を記録しています。
石油・ガス産業においては、ノルウェーの事業者であるAker BP社が産業向けDataOpsの枠組みを運用に展開して、水中の油に対する規制に準拠し、生産損失を削減しています。要するに、Aker BP社はDataOpsを利用したスマート監視システムを実装して、水質汚染のトラブルシューティングに関連するすべてのデータを視覚化しました。また、基盤となる機械学習モデルを搭載した推奨システムを実装して、高濃度の水中の油に関連する最も有害な物質を特定しました。
スマート監視システムによって、産業向けDataOpsプラットフォームからのデータがほぼリアルタイムで表示され、直感的なダッシュボードで視覚化されます。さらに、センサー値とシミュレーターの出力値を組み合わせた計算により、別の方法では容易に入手できない仮想センサーと物理的特性がエンジニアに提供されます。
単一のアセットだけで、Aker BP社は時間の節約と生産損失の削減を実現しながら年間600万ドルの節約を記録しています。また、その一方で、地域の環境を保護し、変わり続ける環境規制に準拠しています。
この比類のないケースを想像してください。複数の事業者で水質汚染の検出に全面的に取り組み、アセットの全セットや現場全体に対してスケールアップしています。途方もない、前向きなトランスフォーメーションの可能性が明白に示されています。
データ共有が可能になると、その効果はさらに強力になります。Aker BP社は、石油・ガス産業へのサブマージドカーゴポンプの主要サプライヤーであるFramo社と連携しています。産業向けDataOpsプラットフォームによって、選択したライブデータを2つの組織間で安全に共有できるようになりました。Framo社は産業向けDataOpsを使用してAker BP社の産業データにアクセスします。これにより、製品開発に情報を利用するのが容易になり、さらに持続可能なパフォーマンスベースのビジネスモデルが実現しました。このソリューションを使用してメンテナンスの必要性を30%、操業停止を70%減らし、ポンプの稼働率を40%増やすことで、排出量と無駄を削減しました。
途方もない、前向きなトランスフォーメーションの可能性が明白に示されています。
この比類のないケースを想像してください。複数の事業者で水質汚染の検出に全面的に取り組み、アセットの全セットや現場全体に対してスケールアップしています。途方もない、前向きなトランスフォーメーションの可能性が明白に示されています。
データ共有が可能になると、その効果はさらに強力になります。Aker BP社は、石油・ガス産業へのサブマージドカーゴポンプの主要サプライヤーであるFramo社と連携しています。産業向けDataOpsのプラットフォームによって、選択したライブデータを2つの組織間で安全に共有できるようになりました。Framo社は産業向けDataOpsを使用してAker BP社の産業データにアクセスします。これにより、製品開発に情報を利用するのが容易になり、さらに持続可能なパフォーマンスベースのビジネスモデルが実現しました。このソリューションを使用してメンテナンスの必要性を30%、操業停止を70%減らし、ポンプの稼働率を40%増やすことで、排出量と無駄を削減しました。このようなソリューションが今後何年かにわたって大規模に拡大するように、種がまかれているのです。増加し続けるデータのソースによって、スマート抽出、民主化、コンテキスト化、および分析の必要性が高まり、産業向けDataOpsの必要性が強調されます。
このような取り組みを進める企業は、重要なデータを効果の著しい、測定可能なアクションに変換するという利点を得られます。一方で、ユーザーの高度化が発達・改善されるとともに、かつて過度に技術的で分かりにくかったツールが、デジタルの専門家でない人にとってさえも変化をもたらす強力なプラットフォームとなります。産業向けDataOpsの台頭により、人間と機械がかつてないほど協力する時代が到来しつつあります。このように人間の知識および創造性を高度なテクノロジーと実質的に同期させる可能性は、産業界においてまだほとんど手付かずの状態です。これは間違いなく、大局的に見て、産業向けDataOpsの最も重要な機会の1つです。
産業向けDataOpsの新たな未来へ
産業または時価総額の違いに関係なく、産業向けDataOpsのすばらしい新世界に立ち向かう組織を待ち受けているのは、輝かしい未来です。まだ新しいアプローチの可能性に追いつこうとしている企業(および産業)の多くは、先駆けとなった潤沢な遺産をすでに持っている企業であり、20世紀の世界を紛れもなく、そして永続的に変えてきました。
21世紀の世界を変えるという使命を帯びて、組織は今こそ、過去に植え付けられたものではなく、未来に向けて計画された新しい遺産を適応させ、構築するときです。こうした企業および産業にとって、産業向けDataOpsは最も価値あるツールになります。
ビジネスを真に変革する取り組みにおいて産業向けDataOpsが極めて重要な役割を果たすことが、お分かりいただけたかと思います。現在の課題は、貴社のビジネスをサポートするために産業向けDataOpsソリューションにどのような能力が必要なのかを定義することです。このセクションでは、提案依頼書(RFP)を作成し、成功に必要なすべての能力と機能を確実に説明するためのガイドラインを示します。
このガイドラインでは考慮すべき主な領域を示しますので、組織のニーズに合わせて枠組みを構築する際のたたき台としてご使用ください。考慮すべき課題を質問形式で示します。これらの課題の一部またはすべてをソリューションプロバイダー候補に直接提起することも、内部の評価手段として使用することもできます。
単一のソリューションではデータのすべての課題は解決されないため、産業データの潜在力を引き出す上で欠かせない適切な能力について、組織を調整する必要があります。
産業向けDataOpsソリューションの提案依頼書(RFP)作成時に考慮すべき事項
ユースケースと過去の成功例
何よりもまず、産業向けDataOpsは、組織に長期的な価値をもたらすことができなくてはなりません。そのためには、組織の目標とソリューションプロバイダー候補の能力とを擦り合わせる必要があります。ソリューションプロバイダーにドメインでの能力が十分にあると知ることで、期待されるROIを達成する可能性が高まります。
ソリューションプロバイダー候補の評価に役立つ質問:
- 貴社の概要、産業の事業分野、主要な製品/サービス、関連の専門知識、ビジネス戦略を手短に説明してもらえますか。
- 貴社の製品/サービスは一般的なものですか、それとも関連の産業に固有のものですか。貴社のドメインの専門知識について説明してもらえますか。
- 主要製品の差別化について説明してもらえますか。
- クライアントのビジネスケース構築と目標とするROIの達成をどのように支援した経験がありますか。ビジネスケースの提供に成功した例を挙げてもらえますか。
専門家によるヒント: 産業向けDataOpsソリューションを成功に導くには、作業開始前に定義されたユースケースから1つまたは2つを選んで始める必要があります。初期のユースケースで成功を収めた後は、さらに2~5件のバックログへと移ります。
- 提案されたソリューションによってアセット管理はさらに効果的になりますか。例を挙げてもらえますか。
- クライアントのユースケースを解決するために、機械学習のソリューションはどのように適用されていますか。ハイブリッドのAIソリューション(物理的機能とMLの機能の組み合わせ)を使用したユースケースを紹介してもらえますか。
- 非構造化データ(ビデオ、3Dなど)に関して提供されたユースケースには、どのようなものがありますか。
- 提供されたユースケースの中で最も一般的なタイプのものを教えてください。
- 相談できるリファレンスカスタマーはいますか。
- 製品デモを見せてもらえますか。
機能
産業向けDataOpsのソフトウェアを正しく評価するには、基盤と接続性という2つの要素を理解する必要があります。基盤の評価は、提案されたソリューションが産業データのユースケースをサポートし、価値実現までの時間を最小化するために必要なツールを提供し、スケーラビリティと再現性を最大化することを保証する上で、極めて重要です。
接続性には、データ抽出とアプリケーション層の2つの要素があります。データ抽出機能では、現在と将来の両方のデータソースに接続できる必要があります。アプリケーション層が焦点を当てるのは、ソリューションプロバイダーがユースケースを提供するために、基盤に加えてアプリケーションをどのようにサポートするのかという点です。
ソリューション候補の評価に役立つ質問:基盤
- このソリューションでは、どのようにデータのコンテキスト化(データマッピング)が実行されますか。それは自動ですか、それとも半自動ですか。このソリューションでは、識別と構築を容易にするための関係が提案されますか。
専門家によるヒント: 理想的なソリューションであれば、このプロセスをできるだけ自動化していなければなりません。そうでない場合は、新しいデータソースを含めるようシステムを手動で拡張しますが、そうすると非常に時間がかかり、管理も難しくなります。
- コンテキスト化(データマッピング)のプロセスはどのように管理されますか。アクセスは容易ですか。
- ユーザーはどのように編集を行いますか。
- 提案されたソリューションでは、データモデルはどのように作成されますか。管理対象のデータソースどうしはどのような関係になっていますか。
- 提案されたソリューションでは、どのようなタイプのデータフォーマットがサポートされますか。
- 提案されたソリューションでは、データの視覚化をどのようにサポートしていますか。
- 提案されたソリューションでは、データの品質をどのように管理していますか。ルールは事前に構築されていますか。ルールは変更できますか。ルールは全体的に適用されますか、それともユースケース単位で適用されますか。
専門家によるヒント: データモデルは再利用されるように設計されます。データの品質には、ユースケース単位で適用できる柔軟性が必要です。たとえば、異なるユースケースに同じデータが必要なことがありますが、このデータをアセットのリモート監視に使用すると、同じデータでパフォーマンス測定の分析モデルを実行する場合と更新頻度を同じにする必要はありません。
- 提案されたソリューションでは、テンプレート化はサポートされますか。適用される作業はどのように再利用できますか。
専門家によるヒント: テンプレート化はソリューションをスケーリングするための主要な要素であり、組織がPoC地獄に陥るのを確実に回避します。
- データおよび管理者に関連付けられたユーザーに関して、提案されたソリューションで通知/メッセージはどのようにサポートされますか。スケーラビリティに関して、ソリューションはどのような評価を得ていますか。
専門家によるヒント: 初期のユースケースから拡大するときに、スケーラブルなソリューションが必要になります。産業向けDataOpsは、現場と企業の両方のレベルでのスケールに対処できます。
- このソリューションではデータのトレンド分析をどのようにサポートしていますか。トレンドはどのように視覚化され、報告されますか。
- このソリューションでは、データ品質のトレンドを分析し、事前定義されたしきい値を指標がいつ超えるのかを予測できますか。
- このソリューションでは、取り込まれたデータの完全性(保全性)をどのように文書化し、転送中にデータが失われないよう徹底していますか。
- サードパーティベンダーとはどのように連携していますか。これまでに連携したことがあるのは、どのベンダーですか。
専門家によるヒント: サードパーティベンダーとの実績あるソリューションの例をご覧いただければ、異なるデータソースに自信をもって接続できます。
- フロントエンドフレームワークはオープン標準で構築されていますか。
- オープンなフロントエンドフレームワークはどのようにサポートされますか。このソリューションでは、時系列データなどのデータを迅速に処理し、容易に利用できるようにすることを、どのように保証していますか。
専門家によるヒント: 適時データへの一元化されたリモートアクセスにより、現場と企業の両方のレベルで多くの新しいユースケースに対応する機会が生み出されます。
- このソリューションに、Microsoft OfficeやAdobe Flashなどのプラグインは必要ですか。
- 情報を失わずに、表形式のデータとグラフ形式のデータの両方を取り込むことはできますか。
- 非同期の時系列データを受信するとき、このソリューションではタイムスタンプをどのように処理しますか。
- このソリューションは、データの挿入・更新・削除を単独で処理できますか。
- バッチおよびストリームベースの取り込み、メモリ内データストレージ対永続データストレージなど、複数の運用モードをサポートしていますか。
- アジャイル開発の原則に従っていますか。また、市場トレンドと技術規格に基づいて、最新の状態をどのように確保していますか。
- このソリューションは、データおよびメタデータの圧縮をどのようにサポートしていますか。
- 各データポイント、イベント、および時系列のソースに加え、ユーザーがデータの品質を評価するための関連のメタデータは報告されますか。
- 既存のデータおよびメタデータのメタデータフィールドはどのように更新されますか。更新はどのように実行および管理されますか。
- データとメタデータの間はどうやって接続されますか。データおよびメタデータは保存されますか、それともリンクされますか。メタデータは複数のデータエントリーにリンクできますか。
接続性
- 提案されたソリューションにおいて、外部システムとの統合はどのようにサポートされますか。また、このような統合の要件には、どのようなものがありますか。
- どのような統合が事前構築され、データ抽出およびアプリケーション層に容易に利用できますか。
専門家によるヒント: 多くのオープンプロトコル向けに、事前構築されたデータエクストラクターが存在しています。また、高度な産業向けDataOpsソリューションには、Siemens、ABB、Emersonなどの独立した産業向けソリューションプロバイダーに対する既存のエクストラクターが搭載されます。
- どうすれば、我々(クライアント)は製品に加える独自のアプリケーションを容易に開発できるでしょうか。
専門家によるヒント: データエンジニアおよび特定分野の専門家(SME)のアプリケーション開発について考えるときは、さらに詳細な評価が必要です。提案されたソリューションのプロバイダーには、Microsoft Power BIやGrafanaなどの広く採用されているアプリケーションに対する事前構築された接続が必要です。
- 提案されたソリューションによって、関連するSDKが提供されますか。サポートされる言語は何ですか。
- 基盤となるデータソースは、どのようなタイプがサポートされますか。どのような接続が最も一般的ですか。
- リアルタイムのデータにアクセスするソリューションの機能は、何という機能ですか。この機能に対するスケーラビリティの制限にはどのようなものがありますか。
- このソリューションには、リレーショナルデータベースへの接続性とネイティブなアクセスはありますか。
- このソリューションには、非リレーショナル構造への接続性とネイティブなアクセスはありますか。
- データ交換(REST APIなど)のインターフェイスの変化に対する安定性とロバスト性をどのように維持していますか。
- このソリューションでは、新しいバージョンと前のバージョン両方のデータパイプラインがサポートされるように、継続性のためのバージョン管理をサポートしていますか。バージョンは元に戻せますか。
- このソリューションは、階層化されたスケーラブルなREST APIをサポートしていますか。
- REST APIはステートレスで、サーバー側の状態同期ロジックの必要がない容易なキャッシングが有効ですか。
- 提案されたソリューションから、基盤となるデータをCSVまたはXLSXファイル形式でエクスポートできますか。データおよびメタデータは標準化フォーマットでエクスポートされますか。
- ヒストリカルデータを抽出する機能に制限はありますか。
ソリューションアーキテクチャ
すべての組織には、最初から対処する必要のある固有のアーキテクチャ要件があります。ここでの鍵は、提案されたソリューションのプロバイダーが既存環境の要件を満たすよう確実に準備できていることです。
ソリューションプロバイダー候補の評価に役立つ質問:
- 提案されたソリューションの主要な要素は何ですか。また、その各要素はどのように動作/相互接続しますか。
専門家によるヒント:ここでアーキテクチャ要件を含めることができます。多くの組織がすでに、OT/ITのデータサイロをデータレイクまたはデータウェアハウスのソリューションに統合するための投資を行っています。産業向けDataOpsソリューションで、既存のインフラストラクチャへの投資を活用する必要があります。
- ソフトウェアはクラウドネイティブでしょうか。どのベンダー(AWS、Azure、GCP)がサポートされますか。
- ホステッド/プライベートクラウドまたはオンプレミスのデプロイはサポートされますか。
- リアルタイムのデプロイをサポートするソリューションの機能は、何という機能ですか。
- 水平スケーリングと垂直スケーリングは、どのようにサポートされますか。
- 高可用性はどのように提供され、フェイルオーバーの手順はどのように処理されますか。
- バックアップと復旧の手順はどのようにサポートされますか。
- アーカイブはどのように扱われますか。
- エッジ機能はどのようにサポートされますか。オンプレミスのデプロイは提供されますか。
- このソリューションはブラウザーに依存しない使用を可能にするために、W3CおよびHTML5の標準規格で検証されますか。
- すべてのデータオブジェクトおよびコードのリネージが追跡され、上流のソースと下流の利用状況が表示されますか。
- コアコンポーネントに変更を導入し、拡張機能を追加するとき、どのように展開が起こりますか。
- 再設定、アップグレード、拡張を本番に移す前にテストできますか。
- ソフトウェアとハードウェアの前提条件は何ですか。
プロジェクトの実行、サービス、サポート
ソリューションプロバイダー候補の評価に役立つ質問:
- 提案されたソリューションの検証/運用の展開から、メンテナンスおよびサポート契約の最終受け入れ/開始までの本番運用開始期間について、説明してください。
- 実装中と実装後に提供されるメンテナンスおよびサポートにはどのようなものがありますか。
専門家によるヒント:プロジェクトの成功を確実なものにするために、提案されたソリューションのプロバイダーには指定されたカスタマーサポート担当者が必要です。
- 典型的なプロジェクト実装プロセスはどのような感じでしょうか。どのようなサポートが受けられますか。
- 一般に、どのようなレベルのサービスが提供されますか。
- 共同作業の利点を最大限活用するために、貴社の熟練した専門家と我々(クライアント)の社内専門家がどのように協力しあうのかを説明してください。
- 提案されたソリューションでは、検索はどのように有効化/サポートされますか。ドキュメントを提供してもらえますか。
専門家によるヒント:検索機能によってデータエンジニアの時間が節約されるとともに、特定分野の専門家(SME)およびその他のデータ利用者がデータを見つけやすくなります。
- このソリューションではどのようにドキュメントをサポートしていますか。また、ドキュメントを利用可能にするにはどうすれば良いでしょうか。
- どのようなトレーニングプログラムが用意されていますか。どのようなものが一般的ですか。
- 我々(クライアント)の組織内で専門的な能力を確実に構築するにはどうすればよいでしょうか。
専門家によるヒント: 組織内で専門的な能力を構築することはデジタル成熟度に向けての重要な一歩です。ソリューションプロバイダーは、このような能力を与えることができなくてはなりません。そうでない場合、組織はソリューションプロバイダーとサービスに基づく関係に陥るというリスクを冒します。
- この期間には、どのようなリソースとサポートが提供されますか。
- 問題解決時には、どのような水準のサポートが提供されますか。多様なサポート水準が提供されますか。
セキュリティ
セキュリティの重要性は常に高まっているため、ソリューションプロバイダー候補は貴社のニーズにいつでも合わせられるようにしておく必要があります。新しいソフトウェア製品に対応する独自のセキュリティ要件を貴社のIT部門が開発している可能性が高いため、包括的なセキュリティのリストを掲載することはしません。ここでは、考慮すべき主要な課題をいくつかご紹介します。
ソリューションプロバイダー候補の評価に役立つ質問:
- 侵入テストおよびサードパーティ評価について、どのような戦略がありますか。
- このソリューションでは、すべてのデータ操作の監査証跡をどのように維持していますか。
- バックボーンコンポーネントの監視と統計はどのような形で提供されますか。
- 我々(クライアント)独自のデータへのアクセスはどのように保証されますか。
- セキュリティ、アクセス、ガバナンスに対して高可用性はどのように維持されますか。
- ユーザーレベルとグループレベルの両方で、アクセス権の取り消しはどのようにサポートされますか。
- 提案されたソリューションにおいて、データはいつどのように暗号化されますか。
- アクセス制御に関するソリューションの機能とは、どのようなものですか。粒度とは何でしょうか。
- アクセス制御のグループはサポートされますか。
- 提案されたソリューションにおいて、認証要件はカスタマイズできますか。
- データポイントに関連する疑わしいアクティビティをユーザーはどのように報告しますか。
- 報告された疑わしいデータポイントを修正または却下するための特別なロールをユーザーに割り当てることはできますか。
- このソリューションはISO規格(または必要に応じて、その他の規格)に対応していますか。このソリューションは管理の連鎖を追跡しますか。
使いやすさ
ソフトウェアソリューションの展開が成功するかどうかは、ユーザーエンゲージメント次第です。使いやすさの欠如は、製品の採用がうまくいかない主な原因の一つとなります。すべてのデータ利用者にとってデータを見つけやすく、使いやすいものにするために、提案されたソリューションは、操作するのに豊富なコーディング経験を必要としない、直感的でうまく設計されたユーザーインターフェイスでなければなりません。さらに、データサイエンティストたちの最大の不満の1つは、データへのアクセシビリティです。データレイク内に一元化されている場合であっても不満が上がります。ソリューションプロバイダー候補はデータを真に使いやすいものにするために、これらのユーザーグループの両方をサポートする必要があります。
ソリューションプロバイダー候補の評価に役立つ質問:
- ユーザーは、提案されたソリューションのさまざまな部分をヘルプなしで移動できますか。
専門家によるヒント: このトピックを評価しようとするときは、製品デモを要求するとよいでしょう。
- ユーザーはソリューションの応答をリアルタイムで見たり感じたりできますか。
- このソリューションでサポートされる同時ユーザー数はいくつですか。コラボレーションに対応できる環境ですか。
専門家によるヒント: 産業向けDataOpsソリューションのユーザー数が増えるにつれて、組織はさらに採用を増やそうと努力し、複数の部署にわたってユースケースの開発を推進する必要があります。
- 検索結果の絞り込みは簡単ですか。
- ユーザーは、IT部門によるサポートや、データエンジニアリング、SQL、または生産プロセスの詳細なトレーニングなしでデータパイプラインを作成できますか。パイプライン作成用のGUIはありますか。
- ユーザーはジョブの実行中に他のタスクを実行できますか。ジョブが完了するとユーザーに通知されますか。
- どのようにして、検索結果をすばやくユーザーに戻していますか。
- ユーザーは、エラー、バグ、サービスの不具合、新しいサービスまたは既存のサービスに対する強化のリクエストをどうやって報告しますか。
ソフトウェアメンテナンス
このセクションは、ソリューション実装後に必要な維持管理について理解を深めることを目的としています。信頼性は、製品の採用におけるもう一つの重要な要素です。提案されたソリューションに対する改善および強化によって予期しない停止時間が起こってはなりません。また、適切な運用を確保するためにハイレベルの手動サポートが必要になってもいけません。
ソリューションプロバイダー候補の評価に役立つ質問:
- 製品の改善はどのくらいの頻度でリリースされますか。メジャーリリースとマイナーリリースのサイクルはありますか。
専門家によるヒント: 組織が何を必要としているのかに応じて、オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウドの製品の間で異なる管理要件を必ず理解してください。
- クライアントは基本ソフトウェアですべての製品アップグレードを受ける権利がありますか。アップグレードはいつ必要ですか。
- 計画的と予定外両方のメンテナンス/停止時間について、クライアントにどのように通知されますか。
- 新しいバージョン/更新はどのように管理されますか。
- どのようなレベルの可用性および稼働時間が保証されますか。システム稼働時間はどのように追跡されますか。
今後の方向性
ソリューションプロバイダー候補のロードマップと組織の目標を確実に一致させます。最優先の技術開発を見ることで、製品の動向が明確になり、組織の成長を支え続けることができます。
ソリューションプロバイダー候補の評価に役立つ質問:
- 製品ロードマップには短期間(6~12か月)と長期間(2~5年)のものがありますか。
- 新製品開発へのアプローチはどのようなものであり、カスタマイズ/機能拡張の展開の可能性はどうなりますでしょうか。
価格モデル
現在に至るまで、産業向けソフトウェア業界ではまだ価格収束は起こっていません。開始に必要な初期の価格(サービスを含む)を理解するために概要レベルの質問をすることは、ソリューションプロバイダー候補の評価に役立ちます。さらに、産業向けDataOpsのソリューションはスケーリングを目的としているため、データソース、ユーザー、ユースケースが増加し始める場合の価格決定の手段を理解することも重要です。
ソリューションプロバイダー候補の評価に役立つ質問:
- 製品価格はどのように決定していますか。価格モデルはユースケースと製品採用の増加にどのように対応していますか。
- どのような要素が製品およびサービスの主要なコスト推進要因になると予測しますか。
前述のとおり、本書の目的は産業向けDataOpsソリューションのRFPを作成するための青写真を提供することです。したがって、現在と将来両方のプロジェクトの成功を達成できます。
多くの場合、最新のテクノロジーと機能が最も重要ですが、組織全体で容易に採用できるソリューションを持つことも同じくらい重要です。
他のすべての産業向けソフトウェアと同様に、ソリューションが使いにくく、利用可能なテクノロジーをユーザーが効果的に適用できない場合には、産業向けDataOpsのソフトウェアもシェルフウェアになる可能性があります。そうすると、必然的に業績が低迷し、期待されるROIが得られなくなります。
最後になりますが、産業向けDataOpsのソリューションはお客様の毎日の運用を構成する必須要素となることを目的としています。したがって、製品ロードマップにお客様の将来のニーズとともに製品が成長することを示している、経験豊富なソリューションプロバイダーとの連携が極めて重要となります。
以上のことを念頭に置き、産業向けDataOpsソリューションのRFPを作成するための知識を活用すれば、データから極めて大きな価値を引き出すことができます。