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プライムポリマーがCognite Data Fusion®︎導入でデータの「サイロ化問題」を解決、スマートファクトリー実現へ

プライムポリマーがCognite Data Fusion®︎導入でデータの「サイロ化問題」を解決、スマートファクトリー実現へ

  • コネクテッドワーカー

プライムポリマーは、Cogniteが提供する製造業向けDataOpsプラットフォーム基盤「Cognite Data Fusion®︎」を導入した。導入のきっかけは、ポリプロピレンなどの化学製品を生産する大規模設備を現場点検する作業の負担軽減だった。4足歩行ロボットによる現場点検を実用化することでオペレーターの負担軽減を目指したものの、その検討過程でデータの「サイロ化問題」が顕在化。それを早期に解決すべくCognite Data Fusion®︎の導入を決めた。

化学メーカーであるプライムポリマー*1)は、大きな課題を抱えていた。それは、化学製品を製造する現場点検に多くの人手とコストがかかるというものだった。

同社は複数の工場を持つ。そのうちの1つである姉崎工場(千葉県市原市)は、ポリプロピレンの製造を手掛けている。姉崎工場の製造設備は2つあり、この2つの製造設備を合わせた設置面積は東京ドーム1個分に相当するほど大きい。しかも製造設備には、ポンプやコンプレッサー、ブロワーなどの動機械、リアクターやサイロなどの静機械が合わせて2000点以上も備え付けてあり、計器類も7000点を超える。計器の中には、高所に取り付けられたものもある。これらを専門のオペレーターが毎日、足を運んで目視で点検しなければならない。同社の生産・技術部に所属する外崎勇太朗氏と佐藤俊太朗氏によると、「1日に4人のオペレーターが約3〜4時間を掛けて、計器類が正常範囲に収まっているのか、各種機器に漏れや破損が生じていないかなどを確認している」という。

この現場点検の負担は極めて大きい。しかも、今後日本は少子高齢化によって労働者人口の減少が予想されており、この負担は次第に肥大化していくことは想像に難くなかった。そのため早期の負担軽減が求められていた。

隠れていた問題が顕在化

負担を軽減するには、どのような策を講じればいいのか。その立案を任せられたのが、外崎勇太朗氏と佐藤俊太朗氏だった。両者とも、プライムポリマーにおいて生産・技術部 姉崎工場 ポリプロピレン課 PP係を務めている。

2人は比較的短い期間で1つの答えにたどり着いた。それは、ロボットなどを活用する方法である。ロボットが自律的に現場に赴き、機器の外観や計器の表示部などを撮影し、AIが異常の有無を判別する。これを実現できれば、オペレーターの負荷は大幅に軽減できるだろう。

2人は早速、最適なロボットを探す作業に取り掛かった。様々な展示会へ足を運ぶとともにロボットの情報を収集した。クローラー型から飛行型ロボットまで様々なロボットを検討したが、最終的に4足歩行ロボットにたどり着いた。4足歩行ロボットであれば不整地や階段など、製造プラントに見られる悪路をものともせず走破し、目的の点検対象までたどり着くことができる。まさに求めていたロボットだった。

しかし当たり前だが、ロボットだけでは現場点検は実現できない。ロボットの動作を制御するソフトウェアも必要だが、何よりもロボットが撮影した写真を解析して異常の有無を判別してくれるAIと、収集したデータを蓄積して採取データを容易に時系列化する機能が必要だった。実際にロボットの制御に特化したソフトウェアは複数あった。その中から選択したのは、Cogniteのロボット制御/管理ソフトウェア「InRobot」だった。ロボットを制御するソフトウェアとしての高い操作性に加えて、スケジュール機能での自動点検が可能なことや、最大の要であるAIによる異常判定ができるからだ。さらにロボットが撮影した写真をAIが解析し、数値データへ変換し、データを積み上げられるため予兆保全への活用も期待できる。

ところがInRobotの導入に向けてCogniteの担当者と話し合いを進めていくと、CogniteはInRobotだけではなく、DataOpsプラットフォーム基盤「Cognite Data Fusion®︎」という製品を提供していることが分かった。Cognite Data Fusion®︎を使えば、点検ロボットが採取した現場の点検データに加えて、これまで分散型制御システムで扱っていた装置運転データや配管計装図(P&ID)などの電子文書や、電子化された過去の補修履歴、技術文書などのデータをすべて1つのプラットフォーム上で扱えるようになる。

実際にプライムポリマーでは、分散型制御システムの運転データやP&IDなどの電子文書、技術文書や補修履歴などは別々に管理されていた。もちろん運転データは専用サーバーに格納され、データ検索や時系列での閲覧が可能だったが、いずれも異なるサーバー上で管理されていたため、オペレーターは運転解析や不具合調査、検討業務をする際はわざわざ別々のサーバーへアクセスし、自分のパソコン上に必要なデータを集める作業をする必要があった。言い換えれば、データはサイロ化されていたわけだ。「サイロ化は以前から問題視されていたが、解決できないと半ばあきらめていた」(外崎勇太朗氏)。

このままロボットによる現場点検を実現しても、現場の点検データというサイロ化された新たなデータ群ができてしまう。すなわちロボットが採取したデータを活用するためにわざわざ新たなサーバーへアクセスしなければならず、データの利活用がさらに困難となる問題に直面した。

まずはサイロ化問題を解決へ

ロボットによる現場点検を実現させ、スマートファクトリー化するためにはまずはデータのサイロ化問題を解決しなければならない。そこでプライムポリマーは、Cogniteが提供するCognite Data Fusion®︎の導入を決めた。Cognite Data Fusion®︎にはAIがデータを自動認識してタグを付ける「AI-OCR機能」が搭載されている。これを使えばさまざまなデータをコンテキスト化し、ほかのデータと紐づけながら整理/格納できる。そのため、これまで異なるサーバーで管理されていた様々なデータをCognite Data Fusion®︎に集約してしまえば、1つのアセットに対して運転データや技術文書、過去の補修履歴やP&IDが紐づく。この結果、Cognite Data Fusion®︎上でアセットを検索すればそれに紐づくすべての情報を簡単に手に入れられるのだ。すなわち、データのサイロ化問題を解決できる。

同社は2023年7月に、Cognite Data Fusion®︎の導入に向けた正式な契約をCogniteと交わした。Cognite Data Fusion®︎導入の対象となる製造設備は、2つある製造設備のうちの1つのみとした。小規模でスタートすれば、より短い期間で導入効果を把握できるようになると考えたからだ。

最初に着手したのは、Cognite Data Fusion®︎に投入する各種データの整理である。前述のように、製造装置の機器、計装は膨大であり、1つの導入対象装置だけでも1000台を超える機器と4000点以上の計器がある。その中には、現在はもう使われてない機器や計器、使われているが説明書や仕様書などのデータが存在しない機器や計器なども含まれていた。このため製造設備内にある機器や計器を1台ずつ精査し、Cognite Data Fusion®︎へデータ投入が必要かどうか判断した。さらに、機器や計器それぞれの技術文書や補修履歴、過去の運転データなどをかき集め、見つからなければ新たに作成するなどの作業を進めた。こうした作業は数カ月かかったものの、Cognite Data Fusion®︎に投入するデータはすべて揃った。

そして正式な契約を結んだ2023年7月以降に、Cognite Data Fusion®︎へデータ投入を始めた。ここから先の作業はとにかく早かった。「データを投入してコンテキスト化する作業はほぼ一瞬で終わったという感覚だった」(佐藤俊太朗氏)。実際にデータ投入の作業は数カ月で完了し、その後は2人が所属する姉崎工場にCognite Data Fusion®︎をリリースし、工場全体での運用を開始した。

作業効率が大幅にアップ

Cognite Data Fusion®︎を導入した効果は大きく、期待を上回るほどだった。つまり、サイロ化問題を解決した効果は、極めて大きかったと言い換えられる。

どのような効果が得られたのか。特筆すべきポイントは4つある。

1つ目は、誰もが同じ情報に簡単にアクセスできるようになったことである。いわゆる「データの民主化」である。従来は、設備担当者やベテラン社員しか知らないデータや情報が存在していた。このためトラブルへの対応や、機器や計器などの更新などを実施する場合、必要な情報やデータが見つからずに作業に支障を来すこともあったという。

2つ目は、P&IDのデジタル化だ。デジタル化したP&IDの画面上で、調査が必要な機器や計器をクリックすると、それに紐付けられた技術文書や補修履歴、運転データなどがズラッと表示される。このため作業を進める上で必要なデータを、誰もが簡単に手に入れられるようになった。

3つ目は、機器や計器の検索時間を大幅に短縮できたことだ。これまでも、機器や計器などの各種データは電子化されていたものの、それらは統合管理していなかった。例えば、設備情報と運転情報はそれぞれ別のサーバーで管理していたため、一括して検索できず、それぞれのサーバーへアクセスして目的のデータを得るのに多くの時間がかかっていた。加えて、「サーバー自体の動作が遅かったため、検索とその結果表示に非常に長い時間がかかっていたが、Cognite Data Fusion®︎導入後は数秒程度に短縮できるようになった」(佐藤俊太朗氏)という。

Cognite Data Fusion®︎の導入効果はこれだけではない。Cognite Data Fusion®︎では、新しいソフトウェア・プログラムを作成することで、投入されたデータを処理して役立つ情報を表示/出力することも可能だ。「ダッシュボード」と呼ぶ機能である。プライムポリマーではCogniteのサポートを得て複数のダッシュボードを作成した。例えば、「設備管理ダッシュボード」と「KPIダッシュボード」である。

設備管理ダッシュボードは、機器や計器に割り振られた4桁の番号を入力すると、それらが広い製造設備の中のどこにあるのかを、デジタル化したP&ID上で提示してくれるというものだ。また、それぞれの機器や計器に関連する技術文書や補修履歴なども併せて表示することができる。トラブル対応や定期点検などでは、あまり頻繁に製造設備に立ち入らないオペレーターも訪れる。そうしたオペレーターでも、このダッシュボードを使えば、すぐに目指す機器や計器の場所が分かる。「従来は、紙に印刷したP&IDの図面をめくって目指し機器や計器を探し、近くまで行ったら手探りで配管のラインを追う必要があった」(外崎勇太朗氏)。さらに今後は、3D画像と結び付ける予定で、これが完成すればれ目指す機器や計器の場所をより探しやすくなることは間違いない。

一方のKPIダッシュボードを使えば、熱交換器の運転状態をリアルタイムで監視できるようになる。例えば、熱効率や汚れ係数、電力/水/蒸気の原単位などを1つの画面に表示することで情報へのアクセス性を高められる。

「スマートファクトリー」の実現へ

当初Cognite Data Fusion®︎の導入は、現場点検を行うロボットの制御/管理ソフトウェア「InRobot」を採用する前段階という位置づけだった。しかし、図らずとも製造設備で働くオペレーターの負担軽減に大いに貢献することになり、プライムポリマーが目指す「スマートファクトリー化」に向けた大きな第一歩となった。

今後はCognite Data Fusion®︎の活用をより高度化させていくことで、オペレーターのさらなる負担軽減を目指す。例えば、Cogniteが用意している「Industrial Canvas」を活用する予定だ。これを使えば、AIを活用した分析や、複数人での共同作業が実行できるようになるという。もちろん、ロボットによる現場点検ついても、今後実現に向けた取り組みを本格化させる考えである。

<脚注>

*1)三井化学と出光興産の合弁会社として2005年4月に設立された化学メーカー。工場は、姉崎工場のほか、市原工場と大阪工場を有する。

  • Customer Story - コンテキスト化

    データ基盤にCognite Data Fusionを活用し、インテリジェント製鉄所の構築を目指すJFEスチールの革新的な取り組み

  • 顧客事例

    出光興産、プラントデータの一元化による製造現場の効率化を本格始動

  • Customer Story - コンテキスト化

    富士石油、バーチャルリファイナリー構築の実現に向けCognite Data Fusion®︎を導入

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