Impact 2025 において、Cogniteは2035年までに顧客価値1,000億ドルを創出するというコミットメントを掲げました。2025年12月の製品リリースは、その目標に向けた次の重要なステップであり、産業ユーザーにとってシンプルで直感的な体験の実現、AIエージェントの信頼性と安定性の向上、そして産業ナレッジグラフ全体でのスケーラビリティ強化に焦点を当てています。1,000億ドルの価値創出を実現するには、顧客およびパートナーの双方が、信頼できるAIエージェントを大規模に構築・展開し、これまで複雑で手作業だった業務を自動化し、オペレーションのワークフローを効率化できることが不可欠です。今回の12月リリースでは、産業ナレッジグラフ、AIエージェント、そして産業向けユーザー体験の各領域にわたるアップデートを通じて、このビジョンをさらに前進させます。
産業ナレッジグラフ:信頼できる基盤で産業AIをスケール
データをAI活用可能な状態にする業界屈指の産業データ基盤である Cognite Data Fusion® は、760兆件を超える時系列データポイント、2億6,000万件のファイル、150万件の現場で取得されたインサイトをコンテキスト化し、産業ユーザーやAIエージェントが利用可能な形で提供することで、そのスケーラビリティを実証してきました。12月リリースでは、Records API と NEAT を使用したセマンティックモデリングが一般提供開始となり、エンタープライズ規模への取り組みをさらに推進します。

Records のエンタープライズ・スケーラビリティ
産業オペレーションでは、毎年数十億件規模のログ、イベント、履歴レコードが生成されます。こうした大量データをグラフノードとして保存すると、クエリ性能が低下する可能性があります。新しい Records API は、パフォーマンスを損なうことなく、数十億件規模の構造化レコードを保存できる次のレベルのスケーラビリティを提供します。Records はデータモデリングとシームレスに統合され、ナレッジグラフ内のノードと直接リレーションを持たせることが可能です。これにより、リアルタイムデータと長期アーカイブの双方に対応した、堅牢かつスケーラブルな構造を実現します。設備の状態、アラーム、イベントといった情報はコンテキスト化された状態で利用可能となり、産業ユーザー、開発者、AIエージェントが Cognite Atlas AI を通じてアクセスできます。
Cognite NEAT:開発者とドメインエキスパートを支援
信頼性が高く、スケーラブルで、使いやすいデータモデルは、Cognite Data Fusion におけるナレッジグラフの基盤です。Cognite Knowledge Graph Transformer(kNowlEdge grAph Transformer, NEAT) は、オープンソースで開発者フレンドリーなツールとして、セマンティックWebのモデリング原則と Cognite Data Fusion の中核機能を橋渡しします。これにより、開発者だけでなくドメインエキスパートにとっても扱いやすい環境を提供します。長年にわたる製品と顧客の知見を取り込んだ NEAT は、AI活用可能なデータモデルを Cognite Data Fusion 上で運用に乗せる最短ルートであり、データモデル構築にかかる時間を数週間から数時間へと大幅に短縮します。
今回のリリースでは、NEAT が正式サポート対象の開発者ツールとなり、開発者フレンドリーな産業AI・データプラットフォームを提供するという Cognite の姿勢を象徴する重要なマイルストーンとなります。これにより、開発者は以下を実現できます。
- 事前デプロイ分析や設定可能なガバナンスプロファイルを通じて、データモデルが本番利用に耐えることを保証
- スプレッドシート、notebooks、スクリプト上で、可読性の高いオブジェクト指向の Python コードを用いた作業
- インタラクティブなエラーフィードバックにより、データモデルを検証し、問題を迅速に修正
NEAT はオープンソースツールとして、Cognite を取り巻くオープンなエコシステムの中核を成し、セマンティックデータモデルを活用したソリューションを迅速かつ大規模に構築するためのリソースを開発者に提供します。
AIエージェント:一貫性と信頼性の向上
AIエージェントへの信頼構築と、継続的なパフォーマンス確保は、エンタープライズでの導入において依然として重要です。リアルタイムでAI活用可能な OT・IT・エンジニアリングデータを基盤に、AIエージェントを構築できる唯一のローコード産業向けAIエージェント基盤である Cognite Atlas AI™ は、市場での勢いを加速させ、毎週新たな顧客を迎え入れています。今回の12月リリースでは、AIエージェントの一貫性と信頼性を確保するための取り組みをさらにシンプルにします。

エージェントのパフォーマンス評価
AIエージェントを展開するユーザーには、信頼構築、品質改善、障害対応のために、時間経過に伴うパフォーマンスの可視性が求められます。新機能 Evaluate Agents により、ユーザーはプロンプトを含むテストセットを作成・管理し、エージェントが期待どおりの応答を返すかを確認できます。評価の実行、合否結果の確認、個々の応答内容の精査が可能となり、エージェントの信頼性に対するデータドリブンな確信を得られます。また、本機能はユーザー受け入れテスト(UAT)や引き渡しを支援し、将来的な品質トラッキングやリグレッションチェックの基盤も提供します。
ナレッジグラフクエリの一貫性
Cognite Atlas AI で構築されたAIエージェントは、組織の産業ナレッジグラフを基盤としています。これらのエージェントは、時系列データ、設備、作業指示など、特定のデータタイプを取得するための産業向け専用ツールにアクセスできます。今回、Query Knowledge Graph ツールにおいて、静的フィルターやプロパティを定義できるようになりました。これにより、エージェントがどのようにデータを取得するかを明示的に制御でき、一貫性と関連性の高い結果を取得可能になります。結果として、AIエージェントに対する信頼性と透明性が向上します。
産業向けユーザー体験:現場ユーザーのための直感的なツール
価値創出を実現し、オペレーションのワークフローをさらに自動化するためには、産業ユーザーにとってシームレスで直感的な体験が不可欠です。本リリースでは、検索機能や Industrial Canvas をはじめとする産業向けアプリケーション全体での改善が含まれています。
検索、3D、Industrial Canvas の体験向上
Search(検索機能)では、初めて利用するユーザーに対して、よりガイドされた体験を提供します。また、一度により多くの結果を表示できるほか、リスト表示とグリッド表示の切り替え、列ヘッダーやフィルター、表示オプションを固定したままテーブル内をスクロールすることが可能になりました。さらに、日本語などの言語構造にも対応し、より関連性の高い検索結果を提供します。

3D 機能も、よりユーザーフレンドリーに進化しています。配管、容器、タンクの直径をワンクリックで計測できるようになり、これまで手間のかかっていた現場作業を削減します。シーンごとに設定をカスタマイズでき、デフォルトのモデル表示、描画品質、ポイントクラウド設定を定義可能です。これにより、日常的に利用するユーザーの負担を軽減するとともに、初回利用時の体験も向上します。

Industrial Canvas では、複雑なデータフローをより理解しやすくするためのユーザビリティ改善を行いました。複数のドキュメント注釈が同じ参照先を指す場合、それらの接続線は1本に統合され、他のドキュメントを避けて90度の角度でルーティングされます。これにより、トラブルシューティング、計画立案、原因分析といった複雑な図面やプロセスを扱う場面でも、キャンバスの可読性が大きく向上します。
2025年12月のプロダクトリリースは、2035年までに顧客価値1,000億ドルを解き放つという Cognite の取り組みにおける、次なる一歩です。産業ナレッジグラフ、AIエージェント、産業向けユーザー体験にわたるこれらの進化は、信頼できるAIエージェントを中核業務のワークフローに組み込むために不可欠です。産業AIを大規模に実現する Cognite の取り組みについて詳しくは、Cognite のグローバルカンファレンス Impact 2025 での製品基調講演をご覧ください。

